約束手形の被裏書人丙が、適法な遡及条件を具備することなく、所持人として、振出人甲に対し手形金請求訴訟を提起し、その係属中に、前裏書人乙が丙から右約束手形の返還を受けたときは、乙は訴訟の目的たる手形金債権の承継人として民訴法七四条一項の第三者にあたる。
権利の承継人として民訴法七四条一項の第三者にあたる場合
手形法14条,手形法16条,手形法49条,民訴法73条,民訴法74条
判旨
訴訟引受を命ぜられた権利の承継人は、被承継人と相手方との間の既存の訴訟状態をそのまま利用できる地位に立つため、被承継人の本訴提起による時効中断の効力は承継人にも及ぶ。
問題の所在(論点)
訴訟継続中に訴訟の目的である権利を承継し、訴訟引受(民事訴訟法50条)によって当事者となった承継人に対し、前主(被承継人)がした提訴による時効中断の効力(民法147条1号、現147条1項1号)が及ぶか。
規範
民事訴訟法50条(旧74条)に基づく訴訟引受を命ぜられた承継人は、被承継人と相手方との間に形成された既存の訴訟状態をそのまま承継し、これを利用することができる地位に立つ。したがって、前主が適法に本訴を提起したことによって生じた時効中断の効力は、引受人である承継人に対しても当然に及ぶものと解する。
重要事実
第一審原告は、上告人が振り出した約束手形を所持し、手形金請求訴訟を提起した。被上告人は、当該訴訟の継続中に、第一審原告から手形の返還を受けることにより、当該手形金債権を承継取得した。これを受け、民事訴訟法上の訴訟引受の申立てがなされ、被上告人が訴訟を引き受けたが、上告人は第一審原告による当初の提訴による時効中断の効力が被上告人には及ばないと主張して争った。
あてはめ
被上告人は、本件約束手形の所持人であった前主から手形金債権を適法に承継しており、裁判所により訴訟引受を命ぜられている。この場合、被上告人は独立した第三者としてではなく、前主の訴訟上の地位を引き継ぐ形で訴訟に関与する。承継人が「既存の訴訟状態をそのまま利用することができる地位」に立つ以上、前主が既に提訴によって時効を中断させたという法的効果もまた、承継されるべき訴訟状態の一部に含まれると解される。
結論
第一審原告の本訴提起による時効中断の効力は、訴訟引受人である被上告人についても生じる。
実務上の射程
訴訟承継(参加承継・引受承継)全般において、前主の提訴による時効中断効が承継人に及ぶことを示した基本的判例である。答案上は、訴訟引受の要件充足を確認した後、承継人の地位が「訴訟状態の承継」を本質とすることの根拠として本法理を引用し、時効完成の成否を論じる際に活用する。
事件番号: 昭和36(オ)652 / 裁判年月日: 昭和39年4月21日 / 結論: 棄却
振出によりすでに受取人の所持に帰した約束手形に共同振出人として署名した者は、あらためてこれを受取人に交付する行為がなくても、手形振出人としての債務を負担する。
事件番号: 昭和60(オ)965 / 裁判年月日: 昭和62年10月16日 / 結論: 棄却
債務の支払のために手形の交付を受けた債権者が債務者に対して手形金請求の訴えを提起したときは、原因債権についても消滅時効中断の効力を生ずる。 (意見がある。)