債務の支払のために手形の交付を受けた債権者が債務者に対して手形金請求の訴えを提起したときは、原因債権についても消滅時効中断の効力を生ずる。 (意見がある。)
手形金請求の訴えの提起と原因債権の消滅時効の中断
民法147条1号,民法149条,民訴法235条
判旨
債務の支払のために手形が授受された当事者間において、債権者が手形金請求の訴えを提起したときは、原因債権の消滅時効を中断する効力を有する。手形債権は原因債権の支払手段として機能しており、手形金請求の訴えの提起は原因債権自体に基づく裁判上の請求に準ずるものと解されるからである。
問題の所在(論点)
債務の支払のために手形が授受された当事者間において、手形金請求の訴えを提起したことにより、原因債権についても時効中断(裁判上の請求)の効力が生じるか。
規範
債務の支払のために手形が授受された当事者間において、債権者のする手形金請求の訴えの提起は、原因債権自体に基づく裁判上の請求(民法147条1号、現147条1項1号)に準ずるものとして、原因債権の消滅時効を中断する効力を有する。
重要事実
債権者が、債務の支払のために授受された約束手形に基づき、手形金請求の訴えを提起した。これに対し債務者は、手形債権と原因債権は別個の債権であることを前提に、手形金請求の訴えの提起によっては原因債権の消滅時効は中断せず、既に消滅時効が完成しているため、これを人的抗弁として手形金の支払を拒絶すると主張した。
あてはめ
手形債権と原因債権は法律上別個の債権ではあるが、経済的には同一の給付を目的とし、手形は原因債権の支払手段として併存するものである。通常、債権者は原因債権の履行請求に先立ち手形金請求を行うことが想定され、原因債権の時効完成は人的抗弁となり得る。このような関係下で、手形金請求をしていながら別途原因債権の時効中断措置を強いることは債権者の通常の期待に反し、他方で債務者に時効援用を許すことは不合理な結果を招く。したがって、手形金請求の訴えは、原因債権の裁判上の請求に準ずるものと評価できる。
結論
手形金請求の訴えの提起により原因債権の消滅時効は中断されるため、消滅時効の完成を前提とする債務者の人的抗弁は認められない。
実務上の射程
原因関係から生じる債権の時効期間が手形債権の時効期間よりも短い場合に実益がある。手形訴訟を提起する場合でも、これによって原因債権の時効も止まるため、二重に訴えを提起する必要がないことを示す規範として重要である。改正民法下の「裁判上の請求による時効の完成猶予・更新」の場面でも同様の理が妥当する。
事件番号: 昭和42(オ)747 / 裁判年月日: 昭和45年6月24日 / 結論: 破棄差戻
原告が、連続した裏書の記載のある手形を所持し、その手形に基づき手形金の請求をしている場合には、当然に、手形法一六条一項の適用を求める主張があるものと解すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)679 / 裁判年月日: 昭和33年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売掛金支払いのために約束手形が振り出された場合、手形債権は原因債権(売掛代金債権)から独立して発生し、手形金請求訴訟において原因債権の存否や性質は当然には影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:上告人は、D株式会社に対する売掛代金債権との関係で、一定の趣旨に基づき本件約束手形を振り出した。しかし、原…