原告が、連続した裏書の記載のある手形を所持し、その手形に基づき手形金の請求をしている場合には、当然に、手形法一六条一項の適用を求める主張があるものと解すべきである。
手形法一六条一項の適用を求める主張があると解すべき場合
手形法16条1項,手形法77条1項1号,民訴法186条
判旨
連続した裏書の記載のある手形を所持して請求する者は、明示的な主張がなくても手形法16条1項の資格授与的効力の適用を主張していると解される。したがって、振出人は所持人が実質的無権利者であることを主張立証しない限り、支払を拒めない。
問題の所在(論点)
手形金請求訴訟において、手形法16条1項(資格授与的効力)の適用の主張を明示していない原告が、連続した裏書のある手形を提出して請求している場合、同条項の適用の主張があったと解することができるか。また、その場合の立証責任は誰が負うか。
規範
手形法16条1項(同法77条1項1号で準用)の権利推定(資格授与的効力)の適用を主張するには、裏書が連続した手形を所持する事実の主張を要する。もっとも、裏書の連続する手形に基づき請求をしている場合には、立証が困難な実質的権利移転の事実をことさらに主張することは通常考えられないため、当然に同条項の適用の主張が含まれると解すべきである。また、この解釈は被告にとっても手形の記載から容易に予見可能であり、不意打ちとはならない。
重要事実
上告人(原告)は、被上告人(被告)が訴外Dに宛てて振り出し、Dが上告人に白地裏書により譲渡したとする連続した裏書のある約束手形4通を所持し、手形金の支払を請求した。原審は、D名義の裏書が同人の意思に基づいたものである確証がないとして、実質的な権利移転が認められないことを理由に上告人の請求を棄却した。これに対し、上告人は手形法16条1項の推定が働くべきであると主張して上告した。
あてはめ
本件において上告人は、第一審より請求原因としてDからの白地裏書による譲渡と手形の所持を陳述し、実際に裏書が連続する手形を証拠として提出している。これは、裏書の連続する手形の所持人である旨の主張をしているものと解するのが相当である。そうであれば、上告人は手形法16条1項により権利者としての推定を受ける。したがって、被上告人が支払を拒むためには、単に裏書が名義人の意思に基づかないことの疑念を示すだけでは足りず、上告人が実質的無権利者であることを抗弁として主張立証しなければならない。
結論
連続した裏書のある手形を提出して請求する原告には、手形法16条1項の主張があるものと認められ、被告側が実質的無権利を立証しない限り請求は認められる。本件ではこの判断を欠いた原判決には審理不尽・理由不備の違法があり、破棄差し戻しを免れない。
実務上の射程
手形金請求訴訟における事実上の主張の定型化を示した判例である。答案上は、原告が手形を提示して請求していれば、特段の事情がない限り16条1項の推定が働くことを前提として議論を進めてよい。被告側の抗弁(悪意・重過失による取得等)の要件検討に議論の重点を置く際の理論的支柱となる。
事件番号: 昭和39(オ)333 / 裁判年月日: 昭和40年4月1日 / 結論: 破棄差戻
約束手形の最後の被裏書人と所持人との間に裏書の連続が欠く場合において、最後の被裏書人、その裏書人および手形所持人との間で、手形を右被裏書人から裏書人に受け戻したうえこれを同人から所持人に譲渡し右所持人の委任に基づいて裏書人が右手形金を取り立てる旨の合意が成立したなど判示の事実関係のもとでは、右手形の所持について、手形上…