約束手形の最後の被裏書人と所持人との間に裏書の連続が欠く場合において、最後の被裏書人、その裏書人および手形所持人との間で、手形を右被裏書人から裏書人に受け戻したうえこれを同人から所持人に譲渡し右所持人の委任に基づいて裏書人が右手形金を取り立てる旨の合意が成立したなど判示の事実関係のもとでは、右手形の所持について、手形上の権利を行使しうる実質上権利関係があつたものと認めることはできない。
裏書の連続を欠く手形の所持人について実質的権利関係があつたものとは認められないとした事例。
手形法16条1項,民訴法395条1項6号
判旨
裏書の連続を欠く手形所持人が、振出人に対し実質的権利を証明して手形権利を行使するためには、手形上の権利を適法に承継した事実だけでなく、指名債権譲渡の対抗要件を備えた事実についても主張・立証を要する。
問題の所在(論点)
裏書の連続を欠く手形所持人が、振出人に対し実質的権利関係の証明をもって手形金請求を行う際、指名債権譲渡の対抗要件(民法467条)の主張・立証が必要か。
規範
裏書の連続を欠く手形所持人が「実質的権利の証明」により権利行使をする場合、単に交付を受けただけでは足りず、前手から手形債権を適法に譲渡された事実を要する。また、指名債権譲渡の方法による場合には、民法467条に基づき、振出人に対する債権譲渡の通知または振出人の承諾という対抗要件を具備していることを主張・立証しなければならない。
重要事実
振出人(上告人)が振出日を白地で振り出した本件手形は、D商事からF、G銀行へと裏書譲渡された。その後、負債整理の関係でLがG銀行から手形を受け戻し、被上告人へ譲渡した。本件手形は不渡りとなり、所持人である被上告人が振出日を補充して振出人に請求したが、被上告人への譲渡は裏書によらずになされ、裏書の連続を欠く状態であった。
あてはめ
原審は、Lから被上告人への譲渡により実質的権利の証明があるとしたが、白地式裏書でない場合に単なる交付で手形債権の譲渡を認めることは不当である。また、民事的な指名債権譲渡の方法によるのであれば、実質的権利の証明として、単なる譲渡事実だけでなく、振出人に対する通知または振出人の承諾という対抗要件の具備を要する。本件ではこれらの点について審理・判示を欠いており、直ちに権利行使を認めることはできない。
結論
裏書の連続を欠く所持人が指名債権譲渡の方法で実質的権利を証明するには、譲渡通知等の対抗要件の主張・立証が必要であり、これを欠く請求は認められない。
実務上の射程
裏書の連続による資格授与的効力(手形法16条1項)を享受できない所持人の救済法理に関する。答案上は、裏書が途切れた所持人が請求を行う場面で、①実質的権利の承継(譲渡合意)と②対抗要件の具備の両面から検討させる際の準拠枠組みとなる。
事件番号: 昭和36(オ)1108 / 裁判年月日: 昭和37年4月6日 / 結論: 棄却
被裏書人欄のおよび裏書の日附欄白地の手形所持人は、右白地を補充しないで権利を行使できる。