主たる債務者の手形債務について消滅時効が完成したときは、手形保証債務も消滅する。
主たる債務者の手形債務の時効消滅と手形保証債務の消滅
手形法32条,手形法71条,手形法77条1項8号,手形法77条3項
判旨
手形保証債務は独立性を有するが保証としての性質も併せ持つため、主たる債務者の手形債務につき消滅時効が完成したときは、手形保証債務も消滅する。手形保証人は、自ら主たる債務の消滅時効を援用して履行を拒絶することができる。
問題の所在(論点)
手形法32条2項が「保証の担保する債務がその方式に欠陥あるため無効なるときといえども、保証債務は其の効力を有す」と定めていることに鑑み、主たる債務につき消滅時効が完成した場合、手形保証人は依然として独立に責任を負うのか、あるいは保証の性質に基づき時効を援用できるのか。
規範
手形保証債務は、主たる債務者と独立して負担するものであるが、履行後に求償権を行使しうるという保証としての性質も有する(手形法32条3項、77条3項)。したがって、主たる債務につき消滅時効が完成したときは、手形保証債務も消滅し、手形保証人は自ら主たる債務の消滅時効を援用することにより、保証債務の消滅を主張できる。
重要事実
手形所持人である上告人が、手形保証人である被上告人に対し、手形金の支払を求めて提訴した。これに対し被上告人は、主たる債務者(振出人)の手形債務につき既に消滅時効が完成していることを理由に、主たる債務の時効を援用し、自らの保証債務の消滅を主張して履行を拒絶した。
事件番号: 昭和60(オ)965 / 裁判年月日: 昭和62年10月16日 / 結論: 棄却
債務の支払のために手形の交付を受けた債権者が債務者に対して手形金請求の訴えを提起したときは、原因債権についても消滅時効中断の効力を生ずる。 (意見がある。)
あてはめ
手形保証債務が独立性を有するとしても、それは方式の瑕疵等の場合に限定されるべきである。もし主たる債務が時効消滅した後に保証債務の履行を強制すれば、手形保証人が求償権を行使した際、主たる債務者から時効を援用されて求償を阻まれるという不合理な事態が生じる。これは求償権を前提とする手形保証の性質に反する。したがって、時効完成の事実は保証債務を付随的に消滅させる原因となる。本件において被上告人は手形保証人にすぎず、振出人としての責任を負うものではないから、主たる債務の時効消滅を援用できる。
結論
主たる債務の消滅時効が完成したときは、手形保証債務も消滅する。手形保証人は主たる債務の消滅時効を援用して請求を拒めるため、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
手形債務の独立性(手形法32条2項)の限界を示す。実体法上の瑕疵(時効消滅)については保証の随伴性が肯定され、民法上の保証と同様の処理がなされることを明確にした。答案では、手形債務の独立性の例外として、求償権の確保という実質的理由から時効援用を認める際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和38(オ)1475 / 裁判年月日: 昭和39年11月6日 / 結論: 棄却
書替え後のいわゆる手残手形(旧手形)の期限後裏書譲渡をうけた者は、その後新手形について弁済があつたことにより手形債権を喪失する。