甲乙共同振出にかかる受取人白地の約束手形を、甲が満期後手形金を支払つて受け戻し、更にこれを丙に交付した場合には、乙は丙に対し手形金の支払をなす義務はない。
手形振出人の一人が支払により手形を受け戻した上更に第三者に交付した場合における他の振出人の責任。
手形法20条,手形法39条
判旨
満期後の支払により回収された白地手形が再流通した場合、その無効(支払済の抗弁)は、満期後に白地を補充して取得した第三者に対しても対抗することができる。
問題の所在(論点)
満期後に手形金の支払により回収された白地手形が、白地未補充のまま再流通し、満期後に取得した者が白地を補充した場合、振出人は支払済による無効を当該取得者に対抗できるか。
規範
手形が満期後に支払われ、振出人に回収された場合、当該手形上の債権は消滅する。このような支払済の手形が再流通した場合、満期後の取得者は、善意取得(手形法16条2項、77条1項1号)の対象とならず、振出人は支払済による無効の抗弁を当該取得者に対抗できる。
重要事実
共同振出人ら(被上告人ら)は、受取人欄が白地の本件手形を振り出した。満期日から約1ヶ月後、振出人の一人であるDが手形金を支払い、本件手形を回収した。その後、Dは受取人白地のまま本件手形をE(上告人の先代)に交付した。Eは、自らを受取人として白地を補充したが、この取得は満期後であった。Eの相続人である上告人は、被上告人らに対し手形金の支払を求めた。
あてはめ
本件手形は満期後に支払がなされ、振出人の一人であるDに受戻されており、この時点で手形債権は消滅し、手形は無効となっている。Eが本件手形の交付を受けたのは満期後であり、かつ受取人欄は白地の状態であった。Eは満期後に白地を補充して手形を取得したに過ぎないため、支払により手形が無効となった事由は、満期後の取得者であるE(およびその相続人である上告人)に対して当然に対抗できるといえる。
結論
振出人は支払済による無効を上告人に対抗できるため、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
満期後の白地補充および取得に関する事例。実務上、満期後の裏書には指名債権譲渡の効力しか認められない(手形法20条1項参照)ことと同様、満期後に流通した手形の取得者は権利の外観を信頼しても保護されず、振出人の抗弁(支払による消滅)が優先されることを示す。
事件番号: 昭和37(オ)1154 / 裁判年月日: 昭和38年5月21日 / 結論: 棄却
手形法第一六条第一項にいう裏書の連続は、その形式によりこれを判定すれば足り、裏書が真正なものかどうかは問うところではない。