一、就業規則所定の懲戒事由があることを理由に普通解雇をする場合には、普通解雇の要件を備えていれば足り、懲戒解雇の要件をみたすことを要しない。 二、要旨省略
一、就業規則所定の懲戒事由があることを理由に普通解雇に付する場合の解雇の要件 二、寝過しにより定時ラジオニュースを放送することができなかつたアナウンサーに対する解雇が解雇権の濫用として無効とされた事例
民法627条,労働基準法20条
判旨
普通解雇事由がある場合でも、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認できないときは、解雇権の濫用として無効となる。放送事故を二度起こしたアナウンサーに対する普通解雇について、過失の態様や他社員との均衡等の諸事情を照らし、解雇は苛酷であり無効と判断された。
問題の所在(論点)
懲戒事由に該当する事実を理由に、懲戒解雇ではなく普通解雇を行うことの可否、および当該解雇が解雇権の濫用(労働契約法16条の法理)として無効となるか。
規範
解雇は、使用者がいつでも自由に行えるものではなく、当該具体的な事情の下において、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、解雇権の濫用として無効となる。また、懲戒事由に該当する事実を理由に普通解雇を行う場合、普通解雇としての要件を備えていれば足り、懲戒解雇の要件まで要求されるものではない。
重要事実
放送会社のアナウンサーである被上告人は、二週間のうちに二度、寝過ごしによりラジオニュースを放送できない事故(第一事故は全休、第二事故は約5分間)を起こした。また第二事故について虚偽の事故報告書を提出した。会社側は、これらの行為が就業規則上の懲戒事由に該当するが、本人の将来を考慮し、就業規則15条3号(前各号に準ずる程度の止むを得ない事由)に基づき普通解雇に処した。
あてはめ
被上告人の行為は放送会社の信用を失墜させ、アナウンサーとしての責任感に欠ける点は否定できない。しかし、①悪意や故意のない過失によるものであること、②通常は他担当者が起こすことになっていたが共に寝過ごしており、本人のみを責めるのは酷であること、③放送の空白時間は短く、会社側も事故防止の万全な措置を講じていなかったこと、④虚偽報告には誤解や気後れの事情があり強く責められないこと、⑤過去の勤務成績は良く、共同不注意の他社員は軽微な処分に留まっていること等の事情が認められる。これらを総合すると、解雇という手段を選択することは苛酷に失し、合理性を欠く。
結論
本件解雇は社会的に相当なものとして是認できず、解雇権の濫用として無効である。
実務上の射程
解雇権濫用法理を確立したリーディングケースである。答案上では、解雇の有効性を判断する際の「客観的合理的理由」と「社会通念上の相当性」の二枠組みのうち、特に後者の判断において、労働者の帰責性の程度、会社側の落ち度、他社員との処分の均衡(平等原則)、過去の非違行為の有無といった個別具体的事実を詳細に拾い上げる際の指針として活用する。
事件番号: 昭和35(オ)624 / 裁判年月日: 昭和37年5月18日 / 結論: 棄却
会社において塗料製法の指導、研究に従事することを職務内容とするいわゆる嘱託であつて、直接上司の指揮命令に服することなく、また遅刻、早退等によつて資金が減額されることはない等一般従業員と異なる待遇を受けているいわゆる嘱託であつても、毎日ほぼ一定の時間会社に勤務し、これに対し所定の賃金が支払われている場合には、労働法の適用…