連合軍占領下における紡績会社の共産党員である従業員の解雇が、その従業員の企業の生産を阻害すべき具体的言動を根拠とするものであつて、解雇当時の事情の下でこれを単なる抽象的危虞に基く解雇として非難することができないものと認められる場合には、かかる解雇をもつて共産党員であることもしくは単に共産主義を信奉すること自体を理由とするものということはできない。
従業員の解雇が単なる信条を理由とする解雇でないと認められた事例
憲法14条,労働基準法3条
判旨
労働者が特定の政党員であることや特定の思想を信奉すること自体を理由とする解雇は、憲法14条や労働基準法3条に抵触し得る。しかし、労働者の具体的言動が企業の生産を現実に阻害し、またはその危険を生じさせる企業破壊的活動と認められる場合には、その具体的行為を理由とする解雇は有効である。
問題の所在(論点)
労働者が特定の政党員であることや特定の思想を信奉すること自体を理由とする解雇は、労働基準法3条等の差別禁止規定に抵触するか。また、思想に関連した具体的言動が企業秩序を乱す場合の解雇の可否が問題となる。
規範
労働基準法3条(及び憲法14条の趣旨)に基づき、使用者は信条を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱をすることは禁じられる。もっとも、解雇の理由が単なる思想・信条そのものではなく、その思想に基づく具体的言動が、企業の生産を現実に阻害し、または阻害する具体的・現実的な危険を生じさせるなど、企業秩序を破壊する行為と認められる場合には、当該言動を理由とする解雇は適法となる。
重要事実
上告人(労働者)らは、日本共産党員またはその同調者であった。被上告人(会社)は、上告人らが特定の政治活動や具体的言動を行い、それが会社の生産を現実に阻害し、またはその危険を生じさせるものであり、かつ労働協約にも違反するとして解雇した。これに対し上告人らは、本件解雇はレッド・パージ政策に基づき共産党員であることを理由になされたものであり、憲法14条および労働基準法3条に違反し無効であると主張して争った。
あてはめ
本件解雇は、上告人らが共産党員等であること自体を理由としたものではない。原審の認定によれば、上告人らの具体的言動は、被上告人会社の生産を現実に阻害し、またはその危険を生じさせる「現実的な企業破壊的活動」と目されるものであった。このような具体的根拠に基づく判断は、単なる抽象的な危惧に基づくものとはいえない。また、当該言動は労働協約にも違反するものであった。したがって、本件解雇は具体的言動を理由とするものであり、思想・信条そのものを理由とする差別には当たらない。
結論
本件解雇は、特定の思想・信条を理由とするものではなく、企業の生産阻害という具体的行為を理由とするものであるため、労働基準法3条および憲法14条に違反せず、有効である。
実務上の射程
本判決は、いわゆるレッド・パージに関する事案であるが、労働基準法3条の「信条」による差別の限界を示している。答案上は、思想の自由や平等原則が問題となる場面で、単なる内面や属性(党員であること等)による解雇は原則無効としつつ、それが「具体的言動」となり「企業秩序や生産阻害の具体的危険」を伴う場合には、解雇の正当理由となり得るという判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)758 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
貸金債務の支払確保のため債権者に小切手を交付した債務者は、特段の事由がないかぎり、右貸金の支払は、小切手の返還と引換にすべき旨の同時履行の抗弁をなし得るものと解するを相当とする