貸金債務の支払確保のため債権者に小切手を交付した債務者は、特段の事由がないかぎり、右貸金の支払は、小切手の返還と引換にすべき旨の同時履行の抗弁をなし得るものと解するを相当とする
小切手の原因債権に基く請求と小切手の返還義務との同時履行
判旨
GHQのレッド・パージ指令(マ書簡)に基づく解雇であっても、特定の個人を指名した命令でない限り、解雇の有効性は裁判所の司法審査に服し、労働組合の正当な活動を理由とする解雇は不当労働行為として無効となる。
問題の所在(論点)
GHQによるレッド・パージ指令に基づく解雇について、日本の裁判所に司法審査権が及ぶか。また、指令に依拠した解雇であっても、労働組合活動を理由とする場合には不当労働行為が成立するか。
規範
GHQの指令が抽象的な基準(共産党員及びその支持者の排除)を示すにとどまる場合、具体的な解雇対象者の選定は事業者の自主的判断に委ねられたものと解される。したがって、当該解雇が指令の趣旨に適合するか否か、および労働関係法令に抵触するか否かは、日本の裁判所の裁判権に服する。また、不当労働行為(労働組合法7条1号等)の成否は、解雇の主観的意図や諸般の客観的事実に基づき、労働組合の正当な活動を主要な根拠としているか否かによって判断される。
重要事実
GHQの最高司令官マックアーサーによる、新聞界からの共産党員排除を求める書簡(マ書簡)に基づき、上告人(会社)が被上告人(従業員)らを解雇した。被上告人らは、自分たちが指令の対象である「共産党員またはその支持者」に該当しないこと、および本件解雇は労働組合における正当な活動を理由とする不当労働行為であることを主張して争った。上告人は、解雇は指令の履行としてなされたものであり、司法審査の対象外であることや、仮に誤りがあっても指令実行の意思に基づくもので不当労働行為の故意はないと反論した。
あてはめ
本件のマ書簡は抽象的な排除方針を示すのみで、被上告人らを具体的に指名した解雇命令ではない。そのため、指令該当性の判断は上告人の責任における自主的判断であり、裁判所はこれを審査できる。事実関係によれば、上告人は被上告人らが指令に該当すると主観的に誤信していただけでなく、実質的には被上告人らの労働組合における正当な活動を主要な根拠として解雇を行ったものと認められる。このような場合、不当労働行為の故意を認めるために指令に「便乗」したことの特段の説示は不要であり、組合活動を理由とする解雇として不当労働行為が成立すると評価される。
結論
本件解雇は司法審査の対象であり、労働組合の正当な活動を主要な根拠とするものである以上、不当労働行為として無効である。
実務上の射程
統治行為論やGHQ指令の超法規的効力が議論される文脈での参照。実務上は、形式的に適法な解雇理由(本件では指令への適合)を掲げていても、実質的な動力が組合活動等の不利益取扱禁止事由にある場合には不当労働行為を構成するという判断枠組み(主要な動機説)の先駆けとして機能する。
事件番号: 昭和36(オ)218 / 裁判年月日: 昭和37年2月15日 / 結論: 棄却
昭和二五年九月二六日連合国総司令部経済科学局D労働課長の私鉄経営者協会に対してなした談話は、私鉄企業が同年七月一八日付連合国最高司令官の内閣総理大臣あて書簡にいわゆる「その他の重要産業」に該当する旨の解釈の表示であつて、当時においては、わが国の国家機関および国民に対し最終的権威をもつていたものと解すべきである。