労働組合から除名された労働者に対してされたユニオン・シヨツプ協定に基づく解雇が権利の濫用として無効である場合には、右解雇を理由として労務提供の受領が拒否されても、労働者は、賃金請求権を失わない。
ユニオン・シヨツプ協定に基づく解雇が無効である場合における労働者の賃金請求権
労働基準法24条,民法536条2項
判旨
労働組合からの除名が無効である場合、ユニオン・ショップ協定に基づく解雇は、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り、解雇権の濫用として無効となる。
問題の所在(論点)
ユニオン・ショップ協定に基づく解雇において、前提となる組合からの除名が無効である場合、当該解雇の効力はどうなるか。また、解雇が無効な場合における賃金請求権の成否が問題となる。
規範
労働組合から除名された労働者に対し、使用者がユニオン・ショップ協定に基づき組合に対する義務の履行として行う解雇は、当該除名が無効な場合には、客観的合理的理由及び社会通念上の相当性を欠き、他に解雇の合理性を裏付ける特段の事由がない限り、解雇権の濫用(労働契約法16条参照)として無効である。また、無効な解雇による労務提供の履行不能は、使用者の責めに帰すべき事由に基づくものと解される(民法536条2項)。
重要事実
上告人(会社)の従業員で構成される労働組合は、被上告人ら(労働者)に対して除名処分を行った。上告人と当該組合との間には、組合から除名された者を解雇する旨のユニオン・ショップ協定が締結されていたため、上告人は協定上の義務を履行するべく被上告人らを解雇した。しかし、後の裁判において、前提となる当該労働組合による除名処分は実体上または手続上の不備により無効であると認定された。
あてはめ
本件において、被上告人らに対する組合の除名処分は無効である。ユニオン・ショップ協定に基づく解雇は、有効な除名の存在を前提とするものであるから、除名が無効である以上、協定上の解雇義務は発生しない。さらに、本件では解雇の合理性を裏付ける特段の事由(解雇に値する別途の債務不履行や不名誉な行為等)も認められない。したがって、本件解雇は権利の濫用として無効である。これに伴い、解雇後の労務提供の不能は、有効な理由なく受領を拒否した債権者である使用者の責めに帰すべき事由によるものといえる。
結論
本件解雇は権利の濫用として無効であり、被上告人らは反対給付である賃金請求権を失わない。
実務上の射程
ユニオン・ショップ協定下での解雇を検討する際のリーディングケースである。答案上は、まず除名の有効性を検討し、除名が無効である場合に本規範を引用して、会社側の解雇に別途の独自理由(合理性を裏付ける特段の事由)がない限り無効となる旨を論じる。また、賃金請求権の帰趨についても民法536条2項とあわせて言及する際に有用である。
事件番号: 昭和29(オ)355 / 裁判年月日: 昭和30年11月22日 / 結論: 棄却
連合軍占領下における紡績会社の共産党員である従業員の解雇が、その従業員の企業の生産を阻害すべき具体的言動を根拠とするものであつて、解雇当時の事情の下でこれを単なる抽象的危虞に基く解雇として非難することができないものと認められる場合には、かかる解雇をもつて共産党員であることもしくは単に共産主義を信奉すること自体を理由とす…
事件番号: 昭和49(オ)165 / 裁判年月日: 昭和52年1月31日 / 結論: 棄却
一、就業規則所定の懲戒事由があることを理由に普通解雇をする場合には、普通解雇の要件を備えていれば足り、懲戒解雇の要件をみたすことを要しない。 二、要旨省略
事件番号: 昭和62(オ)515 / 裁判年月日: 平成元年12月21日 / 結論: 棄却
ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法九〇条により無効である。