勤務に服さなかつた同僚の出勤表にタイム・レコーダーで退出時刻を不正に打刻したことが、就業規則所定の懲戒事由に該当し、しかも、判示のごとき非難すべき情状があるにもかかわらず、他に特段の事情を説示することなく、会社が就業規則の規定に基づいて当該従業員を懲戒解雇に付したことを権利の濫用であるとして無効と判断したことは、審理不尽、理由不備の違法をおかしたものというべきである。
懲戒解雇を無効とした判断に審理不尽、理由不備の違法があるとされた事例
民訴法394条,労働基準法89条
判旨
懲戒処分が懲戒権の濫用となるか否かは、当該違反行為の態様、会社側の事前の警告、処分の目的等を総合して判断すべきであり、事前の明確な警告を無視した不正行為に対する重い処分も直ちに濫用とはいえない。
問題の所在(論点)
タイムレコーダーの不正打刻に対し、会社が事前の警告通りに最も重い懲戒解雇を選択することが、懲戒権の濫用(社会通念上の相当性の欠如)に該当するか。
規範
懲戒権の行使は、企業秩序維持の観点から客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利の濫用として無効となる(労働契約法15条参照)。処分の相当性を判断するにあたっては、当該違反行為の動機、目的、態様に加え、会社側が事前に示していた罰則の予告内容や周知状況、企業秩序維持上の必要性等を総合的に考慮すべきである。
重要事実
会社は給料算定の基礎となるタイムレコーダーの不正打刻を防止するため、不正があった場合は「依頼者も受託者も解雇する」旨の告示を掲示し、従業員全員に周知徹底させていた。従業員である被上告人は、同僚が勤務していないにもかかわらず、この警告を熟知した上で、あえてこれに背き、同僚の退出時刻を打刻する不正を行った。会社は就業規則に基づき、被上告人を懲戒解雇とした。原審は、当該行為が「ふとしたはずみで偶発的」になされたとして懲戒権の濫用を認めたが、会社側が上告した。
あてはめ
本件における不正打刻は、給料算定の根拠を偽る行為であり、会社が事態を重視して「解雇する」旨の告示を掲示し、周知徹底させていた事実がある。被上告人はこの警告を熟知しながらあえて無視して不正に及んでおり、このような状況下では、単に「ふとしたはずみ」による行為とは評価しがたい。厳格な事前の警告が存在し、それに対する明確な違反がある以上、他に特段の事情がない限り、懲戒解雇の選択が直ちに相当性を欠き、権利の濫用にあたるとは断じられない。
結論
本件懲戒解雇が直ちに懲戒権の濫用にわたるものとはなし得ない。原審の権利濫用の判断には審理不尽・理由不備の違法があるため、破棄差戻しを免れない。
実務上の射程
懲戒解雇の有効性を争う場面で、会社側の「事前のルール告知・警告」の有無とその「周知徹底」が、処分の相当性を基礎づける重要な考慮要素となることを示している。答案上、労働者の違反行為が軽微に見えても、会社が事前に解雇等の重い処分を予告し、企業秩序維持の必要性が高い場合には、処分の有効性を肯定する方向で活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)1281 / 裁判年月日: 昭和36年4月27日 / 結論: 棄却
不当労働行為が成立しないとする裁判所の判断としては、解雇が正当な組合活動を理由とするものでない旨を証拠によつて認定判示すれば足り必らずしも、解雇が正当な組合活動以外のいかなる事由によつてなされたものであるかを判示しなければならないものではない。
事件番号: 平成26(受)1310 / 裁判年月日: 平成27年2月26日 / 結論: 破棄自判
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事件番号: 昭和39(行ツ)64 / 裁判年月日: 昭和40年12月10日 / 結論: 棄却
公務員を分限免職にするかどうかは、行政庁の自由裁量に属する。