組合がその組合員数を半減し力も弱くなつていたのに対し、会社(タクシー会社)はD組合員等によつてタクシーの車両数も増やして平常に近い営業を行い、その経営内容も著しく改善されるなど判示の事情があるときは、組合の就労要求を拒否した時点以降会社が継続したロツクアウトは、使用者の正当な争議行為と認められず、会社は右時点以降の賃金支払義務を免れない。
ロツクアウトの継続が違法とされた事例
労働組合法8条,労働関係調整法7条,民法536条2項,民法623条
判旨
使用者のロックアウトは、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当性を認められる限り正当な争議行為となり、その期間中の賃金支払義務を免れる。この相当性は開始時のみならず、継続についても必要であり、客観情勢の変化により対抗防衛の性格を失った後は賃金支払義務を負う。
問題の所在(論点)
使用者のロックアウト(作業所閉鎖)が正当な争議行為として認められ、賃金支払義務を免れるための要件、およびロックアウト開始時には正当であったものが、その後の事情変更により正当性を失うか(継続の相当性)が問題となる。
規範
1. 使用者のロックアウトが正当な争議行為として是認されるかは、労使間の交渉態度・経過、組合側の争議行為の態様、使用者側の受ける打撃の程度等の具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する「対抗防衛手段として相当」と認められるかによって決すべきである。 2. 右の相当性が認められる場合には、使用者はロックアウト期間中の個別的労働契約上の賃金支払義務を免れる。 3. ロックアウトの相当性の要件は、その開始の際のみならず、これを継続するについても必要である。
重要事実
ハイヤー会社(上告会社)の労働組合は、春闘において時限スト、ビラ貼り、本社事務室の不法占拠、会社の指揮管理を排除したタクシーの占有運行等の激しい争議行為を行った。これに対し会社はロックアウトを開始。その後、会社は仮処分執行により事務室等の占拠を排除し、第二組合の就労等によって営業も正常化し、経営状態が著しく改善した。一方、組合員数は半減し、組合側は就労要求や団体交渉を申し入れたが、会社は過去の損害回復等の5条件の履行を先決として1年間にわたりロックアウトを継続した。
あてはめ
本件ロックアウトは、当初は組合の違法かつ激しい争議行為に対抗し、企業を防衛するために適法に開始された。しかし、昭和37年8月18日頃には、組合の勢力が弱まり、対照的に会社側は他組合員等により平常に近い営業を行い、経営内容も著しく改善していた。このような客観情勢の変化に照らせば、組合側に車検証の未返還等の非難されるべき点があることを考慮しても、同日以降はもはや「対抗防衛手段」としての性格を失っていたといえる。したがって、それ以降のロックアウトの継続は相当性を欠き、正当な争議行為とは認められない。
結論
ロックアウトの相当性は、客観的情勢の変化により失われることがある。本件では、対抗防衛の必要性が消滅した時点以降のロックアウトは不当であり、会社は被上告人らに対し、その期間の賃金支払義務を免れない。
実務上の射程
ロックアウトの正当性判断(防衛的・対抗的か、先制的・攻撃的か)という「丸子警報器事件」以来の枠組みを再確認するとともに、それが「継続」についても要求されることを示した重要な判例である。答案上は、開始時と継続時の事情(労使の勢力関係、実害の有無、営業再開の可否)を分けて検討する際の指針となる。
事件番号: 昭和51(オ)541 / 裁判年月日: 昭和55年4月11日 / 結論: 棄却
一 一般放送事業等を営む株式会社の労働組合が十数波にわたる時限ないし指名ストライキ及び放送業務の中枢部門における新勤務拒否闘争等の争議行為を行つたが、会社はこれらのストライキの一部を事前に予測して応急措置を講ずることができ、また、新勤務拒否闘争によつて具体的な放送業務の障害又は放送事故は発生せず、そのような事故等の発生…