省略
いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)が正当性を欠くとしてその期間中における使用者の賃金支払義務が認められた事例
労働組合法8条,労働関係調整法7条,民法536条2項,民法623条
判旨
使用者のロックアウトは、労使間の勢力の均衡が崩れ、使用者が著しく不利な圧力を受ける場合に、対抗防衛手段として相当と認められる限りにおいて正当性が認められ、賃金支払義務を免れる。本件は先制的・攻撃的であり相当性を欠くため、正当な争議行為とは認められない。
問題の所在(論点)
使用者の対抗行為であるロックアウトが、いかなる要件の下で正当な争議行為として認められ、賃金支払義務を免れるか。特に、民法536条2項の「債権者の責めに帰すべき事由」との関係が問題となる。
規範
争議権の保障は労使対等の促進という衡平の原則に立脚する。したがって、使用者によるロックアウト(作業所閉鎖)が正当な争議行為として是認されるためには、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、交渉経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等の具体的諸事情に照らし、衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する「対抗防衛手段として相当」と認められる必要がある。この相当性が認められる場合には、使用者は民法536条2項の適用を免れ、ロックアウト期間中の賃金支払義務を負わない。
重要事実
上告会社(外資系企業の日本支社)において、労働組合が賃上げ等を求めて争議行為を開始した。会社側は、組合による平和義務違反の争議が開始されるやいなや、直ちにロックアウトを実施して組合員を職場から排除した。その実態は、組合側の焦りに便乗し、代替者によって業務を継続させつつ会社に有利な解決を図ることを目的としたものであった。
あてはめ
本件ロックアウトは、形式的には組合側の争議行為後に行われているが、その実質は組合側の争議開始後ただちに職場排除を強行したものである。これは組合の争議による打撃を回避・緩和する範囲を超え、積極的に自律的な解決を強制しようとする「先制的・攻撃的」な性格を有する。このような態様は、労使間の勢力の均衡を回復するための「対抗防衛手段としての相当性」を有するとは認められない。したがって、使用者の受領拒否には正当な理由がなく、民法上の賃金支払義務を免れることはできない。
結論
本件ロックアウトは正当な争議行為とは認められず、上告会社は対象労働者に対する賃金支払義務を免れない。
実務上の射程
ロックアウトの正当性判断におけるリーディングケースである。答案上は、①防御的・対抗的といえるか(先制的・攻撃的でないか)、②均衡回復のためにやむを得ないか、という2軸で「相当性」を検討する枠組みとして用いる。正当性が否定されれば受領遅滞(民法536条2項)となり、賃金請求が認められるという構成をとる。
事件番号: 昭和51(オ)541 / 裁判年月日: 昭和55年4月11日 / 結論: 棄却
一 一般放送事業等を営む株式会社の労働組合が十数波にわたる時限ないし指名ストライキ及び放送業務の中枢部門における新勤務拒否闘争等の争議行為を行つたが、会社はこれらのストライキの一部を事前に予測して応急措置を講ずることができ、また、新勤務拒否闘争によつて具体的な放送業務の障害又は放送事故は発生せず、そのような事故等の発生…