生コンクリート製造販売業者が時限ストライキ等の争議行為に対しロックアウトをした場合において,上記時限ストライキの態様から,上記業者は,取引慣行上,その日の受注の全部を返上するなどして,終日事実上休業の状態にせざるを得ず,時限ストライキが解除された後に従業員が提供した労務は,就労しなかった時間に係る減額がされた後の賃金にも到底見合わないものであったこと,上記業者は,上記争議行為が開始された後,受注が減少して資金繰りが著しく悪化し,納入先の信用も損なわれ,甚大な損害を被ったこと,上記争議行為における従業員らの要求は,同人ら全員が以前所属していた組合と上記業者との間に成立していた合意を,同人らが上記組合を脱退した直後に覆そうとするものであることなど判示の事情の下では,上記ロックアウトは,衡平の見地からみて,上記争議行為に対する対抗防衛手段として相当であり,使用者の正当な争議行為と認められる。
時限ストライキ等の争議行為のため受注を返上せざるを得なくなったことなどにより損害を被った生コンクリート製造販売業者のしたロックアウトが使用者の正当な争議行為と認められた事例
労働組合法8条,労働関係調整法7条
判旨
使用者のロックアウトは、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当性を認められる限りにおいて正当性が認められ、その期間中の賃金支払義務を免れる。本件では、不意打ち的ストライキによる甚大な損害や信義に反する交渉態度に照らし、ロックアウトの正当性を肯定した。
問題の所在(論点)
使用者のロックアウトが「対抗防衛手段として相当」といえるための判断枠組みと、その正当性が認められる場合に賃金支払義務が免除されるか(民法536条2項の適用除外)。
規範
ロックアウトが正当な争議行為として是認されるか否かは、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等の具体的諸事情に照らし、衡平の見地からみて労働者側の争議行為に対する「対抗防衛手段として相当」と認められるかによって決すべきである。この相当性が認められる場合、使用者はロックアウト期間中の賃金支払義務を免れる。
重要事実
生コン製造販売を営む使用者に対し、労働組合が事前通告なし、または開始直前の通告で解除時期を明示しない時限ストライキ(本件争議行為)を繰り返した。これにより使用者は取引慣行上、その日の受注全量を返上せざるを得ず、売上の大幅減少と資金繰りの悪化を招いた。また、組合側は過去に成立した労働条件に関する合意を覆す遡及的な賃上げを要求した。使用者はこれに対抗してロックアウトを実施し、工場の立ち入りと就労を拒否した。
あてはめ
まず、組合側のストライキは不意打ち的かつ解除時期不明な態様で繰り返され、短時間であっても使用者は終日の事実上休業を余儀なくされており、被った打撃は甚大で「著しく不利な圧力」を受けていたといえる。次に、交渉経過についても、組合員が自ら関与した過去の合意を脱退直後に覆す要求を行うことは「労使間の信義の見地からみて相当な交渉態度」とは言い難い。以上から、本件ロックアウトは単なる攻撃的意図ではなく、過重な賃金負担を免れるためのやむを得ない措置であり、衡平の見地から対抗防衛手段として相当性が認められる。
結論
本件ロックアウトには正当性が認められるため、上告人(使用者)は当該期間中の賃金支払義務を免れる。したがって、被上告人らの賃金請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
ロックアウトの正当性判断における「リーディングケース」である。答案では、単に損害の大きさだけでなく、組合側のストライキの態様(不意打ち性・波状的性格)や交渉態度の誠実さ(信義則違反の有無)を相関的に考慮し、それが「防衛的」といえるかを具体的に検討する際の指標となる。
事件番号: 昭和51(オ)541 / 裁判年月日: 昭和55年4月11日 / 結論: 棄却
一 一般放送事業等を営む株式会社の労働組合が十数波にわたる時限ないし指名ストライキ及び放送業務の中枢部門における新勤務拒否闘争等の争議行為を行つたが、会社はこれらのストライキの一部を事前に予測して応急措置を講ずることができ、また、新勤務拒否闘争によつて具体的な放送業務の障害又は放送事故は発生せず、そのような事故等の発生…