部分ストライキによつてストライキ不参加労働者の労働義務の履行が不能となつた場合は、使用者が不当労働行為の意思その他不当な目的をもつてことさらストライキを行わしめたなどの特別の事情がない限り、右ストライキは民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」に当たらない。
部分ストライキと民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」
民法536条2項
判旨
一部の労働者のストライキにより不参加労働者の就労が社会観念上不能となった場合、使用者に不当な目的等の特別の事情がない限り、民法536条2項の「債権者の責に帰すべき事由」には当たらず、当該労働者の賃金請求権は発生しない。
問題の所在(論点)
一部の労働者によるストライキによって、ストライキ不参加労働者の労働義務の履行が不能となった場合、民法536条2項の「債権者の責に帰すべき事由」が認められ、当該不参加労働者は賃金請求権を有するか。
規範
1. 一部の労働者のストライキにより不参加労働者の労働義務の履行が不能となった場合、当該労働者の賃金請求権の存否は、個別労働契約上の危険負担の問題として決すべきである。 2. ストライキは正当な争議権の行使であり、使用者が介入・制御できず、譲歩の程度も使用者の自由であるから、原則として使用者に帰責すべき事由(民法536条2項)はない。 3. ただし、使用者が不当労働行為の意思その他不当な目的をもってことさらストライキを行わせたなどの特別の事情がある場合には、例外的に「債権者の責に帰すべき事由」が認められる。 4. 労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」は、民法536条2項の適用を排除するものではなく、両者は競合しうる。
重要事実
航空会社(被上告人)の東京地区の組合員らが、職業安定法違反の状態解消を求めて機材を占拠するストライキを決行した。これにより羽田空港での地上作業が困難となり、運航スケジュールの変更を余儀なくされた結果、沖縄・大阪の各営業所を経由する便がなくなった。会社は、沖縄・大阪勤務の不参加労働者(上告人ら)に対し、就労の必要がなくなったとして休業を命じた。上告人らは休業期間中の賃金支払を求めて提訴した。
あてはめ
1. 本件ストライキは、会社側が改善案を示したにもかかわらず組合側が承服せず決行されたものであり、会社が不当な目的をもってことさら行わせたなどの特別の事情は認められない。 2. 羽田空港での機材占拠により、沖縄・大阪を経由する便がほぼ皆無となった以上、当該営業所の不参加労働者が就労することは社会観念上無価値となったといえる。 3. したがって、上告人らの労働義務の履行不能について会社に帰責すべき事由はなく、民法536条2項は適用されない。また、労基法26条の休業手当の請求権が発生しうるとしても、それは民法上の賃金請求権を当然に肯定する根拠にはならない。
結論
上告人らの休業期間中の労働義務履行不能は、使用者の責に帰すべき事由によるものとはいえず、賃金請求権を有しない。上告棄却。
実務上の射程
部分的ストライキによる「派生的休業」における賃金支払義務の有無を判断する際のリーディングケース。民法上の帰責事由(賃金10割)と労基法上の帰責事由(手当6割)の二段構えの検討を明確にし、ストライキが原則として会社側の帰責事由にならないことを示した。答案では、まず社会観念上の履行不能(就労の無価値)を認定し、次いで不当目的等の特段の事情の有無を検討する流れで用いる。
事件番号: 昭和48(オ)267 / 裁判年月日: 昭和50年7月17日 / 結論: 棄却
省略