一 労働基準法二六条の「使用者の責に帰すべき事由」は、民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む。 二 定期航空運輸事業を営む会社に職業安定法四四条違反の疑いがあつたことから、労働組合がその改善を要求して部分ストライキを行つた場合であつても、同社がストライキに先立ち、労働組合の要求を一部受け入れ、一応首肯しうる改善案を発表したのに対し、労働組合がもつぱら自らの判断によつて当初からの要求の貫徹を目指してストライキを決行したなど判示の事情があるときは、右ストライキにより労働組合所属のストライキ不参加労働者の労働が社会観念上無価値となつたため同社が右不参加労働者に対して命じた休業は、労働基準法二六条の「使用者の責に帰すべき事由」によるものということができない。
一 労働基準法二六条の「使用者の責に帰すべき事由」と民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」 二 部分ストライキのため会社が命じた休業が労働基準法二六条の「使用者の責に帰すべき事由」によるものとはいえないとされた事例
労働基準法26条,民法536条2項
判旨
労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」とは、民法536条2項よりも広く、使用者側に起因する経営・管理上の障害を含む。しかし、組合が自らの主体的判断でストライキを行い、その結果として他部門の就労が社会観念上無価値となった場合、当該休業は使用者の帰責事由によるものとはいえない。
問題の所在(論点)
一部の組合員によるストライキによって他の労働者が就労不能となった場合、当該休業は労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」に該当するか。特に、ストライキの発生に使用者の不適切な労務管理が影響していた場合の判断枠組みが問題となる。
規範
労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」は、労働者の生活保障という観点から、取引上の過失責任主義とは異なる観点を含み、民法536条2項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む。判断にあたっては、いかなる場合に労働者の生活保障のために使用者に負担を要求するのが社会的に正当とされるかという観点から、個別具体的な考量を要する。
重要事実
航空会社(上告人)において、組合は職業安定法違反の状態解消を求めてストライキを決行し、羽田空港の機材を占拠した。このため地上作業が困難となり、貨物便の中止や旅客便の減便・路線変更が余儀なくされた。その結果、沖縄や大阪を経由する便が消滅し、上告人は当該営業所の非組合員(被上告人ら)に対し、就労を必要としなくなったとして休業を命じた。組合のストライキの背景には、上告人の労務形態が法に抵触する疑いがあった事実が存在する。
あてはめ
本件ストライキは、上告人が改善案を提示し説明を行っていたにもかかわらず、組合が独自の見解に基づき自らの主体的判断と責任で決行したものである。機材占拠により飛行便の運航スケジュールが大幅に変更され、沖縄・大阪での就労が社会観念上無価値となったことは、組合側の行為に直接起因する。上告人の従前の労務管理に法違反の疑いがあったとしても、本件ストライキの態様に照らせば、休業の原因を「使用者側に起因する経営、管理上の障害」と評価することはできず、使用者に生活保障の負担を課す社会的正当性は認められない。
結論
本件休業は労働基準法26条の「使用者の責に帰すべき事由」によるものとはいえず、休業手当の請求は認められない。
実務上の射程
本判決は労基法26条が民法より広い帰責事由を包含することを明示しつつ、ストライキという労働者側の主体的行為による不可抗力的な波及効果については、使用者の責任を否定する。答案では、まず「使用者側の経営・管理上の障害」という広範な規範を立てた上で、休業の直接的な原因がどちらの領域に属するかを、紛争の経緯や就労の価値喪失の程度から論理的にあてはめる際に用いる。
事件番号: 昭和48(オ)267 / 裁判年月日: 昭和50年7月17日 / 結論: 棄却
省略