連合国軍関係事務系統使用人給与規程並びに同技能工系統使用人給与規程の各休業手当に関する各条は、休業期間中における駐留軍労務者の最低限度の生活を保障するために特に設けられた規定であつて、軍の都合による休業が民法第五三六条第二項にいう「債務者ノ責ニ帰スヘキ事由」に基づく履行不能に該当し、労務者が政府に全額賃金の支払を請求し得る場合においても、その請求権を平均賃金の六割に減縮せんとする趣旨に出たものではないと解するのを相当する。
連合国軍関係事務系統使用人給与規程並びに同技能工系統使用人給与規程の各休業手当に関する各項の法意。
連合国軍関係事務系統使用人給与規程(昭和22年5月27日絡設労合408号)6のへ,連合国軍関係技能工系統使用人給与規程(昭和23年4月10日特調庶発446号)26,民法536条2項
判旨
労働基準法26条の休業手当の規定は労働者の最低限度の生活を保障するための趣旨であり、使用者の責めに帰すべき事由により民法536条2項に基づく全額賃金請求権が発生する場合において、その請求権を平均賃金の6割に減縮させる趣旨ではない。
問題の所在(論点)
労働基準法26条(または同趣旨の規程)による休業手当の支払義務がある場合、民法536条2項に基づく全額の賃金請求権は否定されるか。休業手当の規定が民法536条2項の特則として賃金請求権を制限する趣旨を含むかが問題となる。
規範
労働基準法26条(およびこれと同趣旨の給与規程)は、休業期間中における労働者の最低限度の生活を保障するために、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合に平均賃金の6割以上の手当支払を義務付けたものである。これは労働者の生活保障を目的とする最低限度の定めであり、民法536条2項(債権者の責めに帰すべき事由による履行不能)の適用を排除し、労働者が有する全額賃金請求権を制限するものではない。
重要事実
日本政府に雇用され駐留軍に労務を提供する駐留軍労務者が、軍の都合(使用者の責めに帰すべき事由)により休業を余儀なくされた。駐留軍労務者給与規程には、労働基準法26条と同様に平均賃金の6割の手当を支給する旨の条項があった。上告人は、同条項が民法536条2項の特則として機能し、債権者側の帰責事由の有無にかかわらず一律に6割の手当を支払えば足り、全額の賃金を支払う必要はないと主張して争った。
あてはめ
本件給与規程の立案にあたり、民法536条2項の適用を排除する特段の配慮がなされた事実は認められない。また、駐留軍労務者の労働関係に特殊性があるとしても、給与に関し私企業の労働者と区別する合理的根拠はない。したがって、本件規程は休業中の労働者の生活を最低限度保障する趣旨に留まる。軍の都合による休業が「債権者の責めに帰すべき事由」に該当する場合、労働者は本来民法上の全額賃金請求権を有するが、本件規程がこの権利を6割に減縮させる趣旨であるとは解されない。
結論
労働基準法26条等の休業手当規定は、民法536条2項に基づく賃金全額の請求を妨げるものではない。したがって、使用者の責めに帰すべき事由がある場合には、労働者は平均賃金の6割を超えて、賃金全額の支払を請求することができる。
実務上の射程
労働法における「休業手当(労基法26条)」と「民法上の賃金請求権(民法536条2項)」の関係を整理する際のリーディングケースである。答案上は、両者の要件である「責めに帰すべき事由」の範囲の違い(労基法26条は不可抗力でない限り広く含むとするのが通説)に留意しつつ、民法上の権利が優先することを論じる際に引用する。
事件番号: 昭和57(オ)1189 / 裁判年月日: 昭和62年7月17日 / 結論: 破棄自判
一 労働基準法二六条の「使用者の責に帰すべき事由」は、民法五三六条二項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含む。 二 定期航空運輸事業を営む会社に職業安定法四四条違反の疑いがあつたことから、労働組合がその改善を要求して部分ストライキを行つた場合であつても、同社がストライキに先…