使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者が、労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することはできるが、その限度は、平均賃金の四割の範囲内にとどめるべきである。
使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者が、労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することの可否およびその限度。
民法536条2項,労働基準法26条,労働基準法24条1項
判旨
使用者の責に帰すべき事由により解雇された労働者が解雇期間中に他職で得た利益(中間利益)がある場合、使用者は民法536条2項但書に基づきこれを賃金から控除できるが、労働基準法26条の趣旨に照らし、平均賃金の6割を超える部分(4割まで)に限定される。
問題の所在(論点)
使用者の責に帰すべき事由による解雇期間中の賃金債権に対し、労働者が他職で得た中間利益を控除(相殺的決済)することができるか、また、労働基準法26条との関係でその控除額に限界があるか。
規範
1. 労働者が解雇期間内に他職で得た利益は、副業的で解雇がなくとも取得できた等の特段の事情がない限り、民法536条2項但書に基づき使用者に償還すべきものである。2. 労働基準法26条の休業手当の規定は、解雇期間中にも適用され、労働者の最低生活を保障する趣旨である。3. したがって、使用者は中間利益を賃金から控除できるが、その限度は平均賃金の4割まで(平均賃金の6割は保障すべき)に制限される。
重要事実
上告人(労働者)は、被上告人(使用者)によって不当に解雇された。解雇期間中、上告人は他の職に就いて利益を得ていた。上告人は被上告人に対し、解雇期間中の全額の賃金支払を求めて提訴したが、原審は中間利益の額を平均賃金の4割の限度で控除した残額の支払のみを命じたため、上告人が民法536条2項但書および労働基準法24条1項の解釈を誤っているとして上告した。
あてはめ
労働者は労働時間中、使用者の勤務に服すべき義務があるため、解雇されなければ得られなかった中間利益は原則として償還対象となる(民法536条2項但書)。しかし、労働基準法26条は使用者の責による休業に際し平均賃金の6割の支払を強制しており、これは最低生活保障を目的とする。この趣旨は不当解雇時にも妥当するため、決済手続の簡便化として控除を認めるにせよ、生活保障の対象である平均賃金の6割については控除を許さないと解するのが相当である。
結論
使用者は、解雇期間中の賃金を支払う際、労働者が他職で得た利益を平均賃金の4割を限度として控除することができる。本件において、平均賃金の4割の限度で控除し残額の支払を命じた原判決は正当である。
実務上の射程
不当解雇に基づくバックペイ請求事案において、中間利益の控除(相殺)の可否および限界を判断する際のリーディングケースである。答案では、まず民法536条2項但書による控除可能性を認めつつ、労基法26条の生存権的機能から控除の限界(4割限度)を導く論理構成として用いる。
事件番号: 平成15(受)1099 / 裁判年月日: 平成18年3月28日 / 結論: 破棄自判
使用者の責めに帰すべき事由による解雇の期間中の賃金につき使用者が支払義務を負う金額を算定する場合において,労働者が同期間中に他の職に就いて得た利益の額が当該利益を得た期間における平均賃金合計額の4割を超え,かつ,使用者が労働者に対し労働基準法12条4項所定の賃金に当たる期末手当及び勤勉手当を支払うこととされているという…