使用者の責めに帰すべき事由による解雇の期間中の賃金につき使用者が支払義務を負う金額を算定する場合において,労働者が同期間中に他の職に就いて得た利益の額が当該利益を得た期間における平均賃金合計額の4割を超え,かつ,使用者が労働者に対し労働基準法12条4項所定の賃金に当たる期末手当及び勤勉手当を支払うこととされているという事実関係の下では,上記利益を得た期間に時期的に対応する期間に係る期末手当及び勤勉手当の全額を対象として,上記の平均賃金合計額の4割を超える利益の額を控除すべきである。
使用者の責めに帰すべき事由による解雇の期間中の賃金につき使用者が支払義務を負う金額を算定する場合において期末手当等の全額を対象として労働者が他の職に就いて得た利益の額を控除すべきであるとされた事例
民法536条2項,労働基準法12条1項,4項,労働基準法24条1項,労働基準法26条
判旨
不当解雇により就労を拒絶された労働者が解雇期間中に他所で得た利益(中間利益)を、使用者が未払賃金から控除する場合、平均賃金の6割を超える部分を対象とすべきであり、さらに平均賃金算定の基礎に含まれない賃金(賞与等)からも控除できる。
問題の所在(論点)
不当解雇による賃金請求において、民法536条2項但書に基づく中間利益の控除が認められる範囲、および労基法12条4項所定の賃金(賞与等)がその控除対象に含まれるか。
規範
1. 使用者の責めに帰すべき事由により解雇された労働者が、解雇期間中に他所で得て得た利益(中間利益)を、使用者が賃金支払債務から控除することは民法536条2項但書により許容される。 2. もっとも、労働基準法26条の趣旨を鑑み、平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることは禁止される。したがって、平均賃金の6割を超える部分から、当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内の中間利益を控除できる。 3. 中間利益の額が平均賃金の4割を超える場合には、さらに平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(労基法12条4項所定の賞与等)の全額を対象として利益額を控除することが許される。
重要事実
1. X(保母)は、Y(保育所経営者)から職種変更を伴う配置転換命令を受けたが、これを拒否したため解雇された(本件解雇)。 2. Xは本件解雇が無効であるとして、雇用契約上の地位確認および解雇期間中の賃金(本俸・特殊業務手当等、および期末手当等)の支払いを求めた。 3. 本件解雇は権利濫用として無効と判断されたが、Xは解雇期間中に他所で就労し、収入(中間利益)を得ていたため、Yが支払うべき賃金からその額を控除できるかが争点となった。
あてはめ
1. Xが解雇期間中に他所で得た中間利益は、同時期に対応する賃金から控除されるべきであるが、労働者の生活保障の観点から、各月の平均賃金(1か月24万0102円)の6割(約14.4万円)に相当する額については控除が禁止される。 2. 本件では、Xの中間利益の月平均額が平均賃金の4割(約9.6万円)を超えている。この場合、まず平均賃金の4割相当分を各月の本俸等から控除する。 3. それでもなお控除しきれない中間利益の残額については、平均賃金算定の基礎に含まれない「期末手当等(賞与)」からも控除することが、衡平の観点から許容される。 4. 以上の計算に基づき、控除後の具体的な既払賃金額を算出すべきである。
結論
解雇期間中の賃金から中間利益を控除する際、平均賃金の6割部分は保護されるが、それを超える部分および賞与等については控除の対象となる。原審の算定には法令違反があるため、上記基準に基づき支払額を変更する。
実務上の射程
本判決は、米軍貯留職事件(最判昭37.7.20)等の流れを汲み、賞与(労基法12条4項の賃金)も中間利益の控除対象となることを明示した重要な実務上の指針である。
事件番号: 昭和36(オ)189 / 裁判年月日: 昭和37年7月20日 / 結論: 棄却
使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者が、労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することはできるが、その限度は、平均賃金の四割の範囲内にとどめるべきである。
事件番号: 平成20(受)6 / 裁判年月日: 平成21年10月16日 / 結論: 破棄差戻
米国の州によって同州港湾局の我が国における事務所の現地職員として雇用され,解雇された者が,雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び解雇後の賃金の支払を求めて提起した訴訟について,同事務所には我が国の厚生年金保険等が適用され,その業務内容は同州港湾施設の宣伝等であり,財政上の理由による同事務所の閉鎖が解雇理由とさ…