使用者が、その責めに帰すべき事由による解雇期間中の賃金を労働者に支払う場合、労働基準法一二条四項所定の賃金については、その全額を対象として、右賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に労働者が他の職に就いて得た利益の額を控除することができる。
使用者がその責めに帰すべき事由による解雇期間中の賃金を労働者に支払う場合の労働基準法一二条四項所定の賃金と労働者が解雇期間中他の職に就いて得た利益額の控除
民法536条2項,労働基準法12条1項,労働基準法12条4項,労働基準法24条1項,労働基準法26条
判旨
不当解雇による賃金支払債務から中間利益を控除する際、平均賃金の6割を超える部分および平均賃金算定の基礎に含まれない賃金(一時金等)の全額が控除の対象となるが、控除は時期的に対応する期間内の利益に限られる。
問題の所在(論点)
民法536条2項に基づく賃金請求において、中間利益を控除できる範囲に、平均賃金算定の基礎に含まれない一時金(労働基準法12条4項)も含まれるか、またその控除にあたって時期的な対応関係が必要か。
規範
1. 使用者の責めに帰すべき事由による解雇期間中の賃金から、労働者が他所で得た利益(中間利益)を控除できる。2. ただし、労働基準法12条1項の平均賃金の6割に達するまでの部分は控除の対象外である。3. 平均賃金の6割を超える部分、および同法12条4項所定の平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(一時金等)の全額は控除の対象となる。4. 控除し得る利益は、その発生期間が賃金の支給対象期間と時期的に対応するものに限られる。
重要事実
上告人(使用者)は、被上告人ら(労働者)に対して行った解雇が不当労働行為として無効とされた。被上告人らは解雇期間中の中間利益を得ていた。原審は、中間利益の控除対象は平均賃金算定の基礎となる賃金に限られ、一時金(賞与)は控除の対象にならないとして、中間利益を差し引かずに一時金の全額支払を命じたため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
1. 労働基準法26条の休業手当の趣旨に鑑み、平均賃金の6割までは控除できないが、それを超える部分や算定基礎外の賃金(一時金)は、使用者の支払義務の範囲内で中間利益と相殺・控除することが許される。2. 原審は一時金を控除対象外としたが、これは法解釈を誤っている。3. もっとも、控除を行うには、当該賃金の支給対象期間と中間利益の発生期間が時期的に対応していなければならない。本件一時金についても、各支給対象期間に対応する期間内に得た利益を確認し、控除後の残額を算定すべきである。
結論
平均賃金算定の基礎に含まれない一時金も、平均賃金の6割という制限とは無関係に中間利益の控除対象となる。ただし、控除は時期的に対応する期間内の利益に限られるため、具体的な残額確定のため本件を差し戻す。
実務上の射程
解雇無効時のバックペイ請求における「中間利益の控除」の限界を示す重要判例である。答案では、民法536条2項但書の適用として論じた上で、労働基準法26条による修正(6割保護)の範囲を明示し、かつ「時期的な対応関係」を検討し忘れないようにする必要がある。一時金も控除対象に含まれる点も実務上極めて重要である。
事件番号: 昭和36(オ)190 / 裁判年月日: 昭和37年7月20日 / 結論: 棄却
使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者が、労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することはできるが、その限度は、平均賃金の四割の範囲内にとどめるべきである。
事件番号: 平成15(受)1099 / 裁判年月日: 平成18年3月28日 / 結論: 破棄自判
使用者の責めに帰すべき事由による解雇の期間中の賃金につき使用者が支払義務を負う金額を算定する場合において,労働者が同期間中に他の職に就いて得た利益の額が当該利益を得た期間における平均賃金合計額の4割を超え,かつ,使用者が労働者に対し労働基準法12条4項所定の賃金に当たる期末手当及び勤勉手当を支払うこととされているという…
事件番号: 昭和62(オ)515 / 裁判年月日: 平成元年12月21日 / 結論: 棄却
ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、民法九〇条により無効である。
事件番号: 昭和43(オ)932 / 裁判年月日: 昭和48年12月12日 / 結論: 破棄差戻
一、憲法一四条や一九条の規定は、直接私人相互間の関係に適用されるものではない。 二、企業者が特定の思想、信条を有する労働者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。 三、労働基準法三条は、労働者の雇入れそのものを制約する規定ではない。 四、労働者を雇い入れようとする企業者が、その…