月掛生命保険外務職員のストライキを理由として、当該職員に支給すべき給与のうちから特定項目の給料を削減したことの適否を判断するにあたり、かかる削減を行なうことのできる特段の事情があるかどうか、それがないとすれば、右給料が拘束された勤務時間に応じて支払われる賃金としての性格を有するかどうかを審究することなく、単に、勤務時間拘束の制度が仕事の成果に応ずる能率給の実を挙げるために設けられたものではなく、また右給料が一定の資格にとどまる間その期間中における募集、集金の成果と関係なく支給されるということから、これをいわゆる固定給と認めてストライキによる削減を適法と判断したことは、審理不尽の違法をおかしたものというべきである。
ストライキを理由とする賃金の削減ができる固定給と認めた判断に審理不尽の違法があるとされた事例。
労働基準法24条,民法624条,民訴法395条1項6号
判旨
ストライキ等による欠勤に基づき削減可能な「固定給」とは、拘束された勤務時間に応じて支払われる賃金であり、過去の仕事の成果に応じて決定され分割支給されるに過ぎない給与はこれに含まれない。また、生活補助的性格を有する手当は、特段の定めがない限り、当然に削減し得るものではない。
問題の所在(論点)
ノーワーク・ノーペイの原則に基づき削減可能な賃金の範囲。特に、支給額が一定期間固定されているものの、その決定基準が過去の業績にある給与や、生活補助的性格を有する手当が、削減対象となる「固定給」に含まれるか。
規範
ストライキによって削減し得る「固定給」とは、労働協約等に別段の定めがある場合を除き、拘束された勤務時間に応じて支払われる賃金としての性格を有することを要する。単に支給額が相当期間固定しているだけでは足りず、また、勤務時間の長短にかかわらず完成された仕事の量に比例して支払われるべきものであってはならない。
重要事実
生命保険会社の外勤職員である上告人らがストライキを実施した際、会社側が固定給と称する各手当(勤務手当、交通費補助、給料、出勤手当等)を削減した。これらの給与のうち、給料等は過去3〜4ヶ月の成績に基づく「資格」により額が決まり、当該期間中は成果に関わらず定額が支給される体系であった。また、勤務手当等は生活補助的性質を有していた。原審はこれらを時間的・継続的勤務の対価である固定給と認め、削減を有効とした。
あてはめ
勤務手当および交通費補助は、労働の対価ではなく生活補助費の性質を有するため、欠勤割合に応じて当然に削減し得るものではない。また、給料、出勤手当等は、資格(給与級別)が過去の成果により決定される以上、その実質は過去の仕事の量に対する報酬を平均化して分割支給しているに過ぎない。これらは勤務時間の長短を基準として決定されたものとはいえず、削減可能な「固定給」には当たらない。
結論
本件各給与は、ストライキを理由として削減できる固定給には該当せず、会社側による削減は違法である(原判決破棄・差し戻し)。
実務上の射程
ノーワーク・ノーペイの原則(民法624条1項、労基法24条1項参照)の適用範囲を画定する際の重要判例である。答案上は、賃金項目の性質が「時間の対価」か「仕事の成果の対価(あるいは生活保障)」かを峻別し、前者に該当する場合のみ当然にカットできると論じる際の論拠となる。
事件番号: 昭和51(オ)1273 / 裁判年月日: 昭和56年9月18日 / 結論: 破棄自判
ストライキの場合における家族手当の削減が昭和二三年ころから昭和四四年までは就業規則の規定に基づいて実施されており、その後右規定が削除され同様の規定が社員賃金規則細部取扱のうちに定められてからも従前の取扱が引続き異議なく行われてきたなど、原判示の事実関係のもとにおいては、ストライキの場合における家族手当の削減は労使問の労…