家族手当付加額が扶養家族を有する者に対し被扶養者の数に応じて定められた金額を支給するものであり、勤務を欠いたことにより右付加額が控除されるのは例外的であるという原判示の事実関係の下においては、右家族手当付加額は、ストライキの場合に不就労の時間に応じて控除されるとしても、労働基準法(平成五年法律第七九号による改正前のもの)三七条二項にいう家族手当に当たる。
ストライキの場合に不就労の時間に応じて控除される家族手当付加額が労働基準法(平成五年法律第七九号による改正前のもの)三七条二項にいう家族手当に当たるとされた事例
労働基準法(平成5年法律第79号による改正前のもの)37条2項,労働基準法37条4項
判旨
労働基準法37条2項及び規則21条1号所定の「家族手当」に該当する給与は、不就労の時間に応じて控除される扱いがなされていても、同条による割増賃金の算定基礎から除外できる。
問題の所在(論点)
扶養家族数に応じて支給される「家族手当付加額」について、ストライキ等の不就労に応じた控除が行われている場合であっても、労働基準法37条2項(現5項)の割増賃金算定基礎から除外される「家族手当」に該当するか。
規範
労働基準法37条2項(現5項)及び労働基準法施行規則21条1号にいう「家族手当」とは、扶養家族の数に応じて支給される等、労働と直接の関係なしに労働者の生活保障的見地から支払われる賃金を指す。かかる性質を有する手当であれば、ストライキ等の不就労に応じて控除される運用がなされていたとしても、算定基礎から除外される家族手当に該当すると解するのが相当である。
重要事実
会社が支給する家族手当付加額は、扶養家族を有する者に対し、一律定額の基礎額とは別に、被扶養者の数に応じて定められた金額を支給するものであった。また、勤務を欠いたことにより当該付加額が控除されるのは例外的な場合に限られていた。会社はストライキの際、不就労時間に応じてこの付加額を控除する扱いをしていたが、割増賃金の算定基礎には算入していなかった。
あてはめ
本件家族手当付加額は、被扶養者の数に応じて金額が決定されており、生活保障的性格が顕著である。不就労による控除は例外的な場合に限られており、ストライキ時に不就労時間に応じた控除が行われていたとしても、その事実のみをもって直ちに当該手当の生活保障的性質が失われ、労働の対価性が強まるものとはいえない。したがって、本件付加額は性質上「家族手当」としての実質を維持しているといえる。
結論
本件家族手当付加額は労働基準法37条2項にいう家族手当に当たり、これを割増賃金の算定基礎に算入しないことは適法である。
実務上の射程
割増賃金の算定基礎から除外できる「家族手当」等の除外賃金(法37条5項、規則21条)の該否判断において、不就労控除(ノーワーク・ノーペイ)の慣行があっても、支給形態が家族数等の個人的属性に基づいている限り、除外性が維持されることを示した。答案上は、除外賃金の限定列挙性を指摘した上で、実質的に家族手当等の性質を備えているかを検討する際の補強材料として用いる。
事件番号: 平成4(オ)1078 / 裁判年月日: 平成5年6月25日 / 結論: 棄却
タクシー会社の乗務員に対し、月ごとの勤務予定表どおり勤務した場合には月額三一〇〇円ないし四一〇〇円の皆勤手当を支給するが、右勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合には右手当の全部又は一部を支給しない旨の約定は、右手当の支給が代替要員の手配が困難となり自動車の実働率が低下する事態を避ける配慮をした乗務員に対する報奨…