ストライキの場合における家族手当の削減が昭和二三年ころから昭和四四年までは就業規則の規定に基づいて実施されており、その後右規定が削除され同様の規定が社員賃金規則細部取扱のうちに定められてからも従前の取扱が引続き異議なく行われてきたなど、原判示の事実関係のもとにおいては、ストライキの場合における家族手当の削減は労使問の労働慣行として成立していたものであり、このような労働慣行のもとにおいてされた本件ストライキ期間中の家族手当の削減は、違法とはいえない。
ストライキ期間中の家族手当の削減が違法とはいえないとされた事例
労働基準法24条,労働基準法37条2項
判旨
ストライキ期間中の賃金カットの対象は、個別の労働協約や労働慣行の趣旨に照らして判断されるべきであり、家族手当であっても長年の慣行があれば削減の対象となり得る。
問題の所在(論点)
生活保障的性格を有する家族手当が、ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、ストライキ期間中の賃金削減(カット)の対象に含まれるか。また、労働慣行としての有効性が認められるか。
規範
ストライキ期間中の賃金削減(ノーワーク・ノーペイの原則)の対象となる賃金の範囲は、いわゆる「賃金二分論」に基づき一律に決するのではなく、当該労働協約等の定め又は労働慣行の趣旨に照らし、個別的に判断すべきである。
重要事実
上告会社D造船所の従業員である被上告人らは、ストライキを実施した際、家族手当を削減された。同所では昭和23年頃から就業規則に基づき、ストライキ期間中の家族手当を削減する取扱いが継続されていた。昭和44年に就業規則から当該規定が削除された後も、社内の「細部取扱」に同様の規定が設けられ、過半数労働組合の了承も得て、長年異議なく削減が継続されてきた経緯があった。
あてはめ
まず、上告会社では20年以上にわたり家族手当を削減する取扱いが継続されており、就業規則変更後も過半数組合の意見を徴した上で異議なく実施されてきたことから、当該削減は有効な労働慣行として労働契約の内容となっていた。次に、労働基準法37条2項が家族手当を割増賃金の基礎から除外しているのは、労働との直接的結びつきが薄いことを考慮したに過ぎず、ストライキ時に削減することを禁じる趣旨ではない。したがって、個別的判断として本件家族手当は削減の対象に含まれると解するのが相当である。
結論
本件家族手当の削減は労働慣行に基づき有効であり、労働者の請求は棄却される。
実務上の射程
賃金カットの範囲について「抽象的一般的賃金二分論」を否定し、個別具体的な合意や慣行を重視する姿勢を示した。答案上は、賃金カットの可否が争点となる際、就業規則や労働協約の規定の有無を確認した上で、明文がない場合には本判例を引用し、過去の運用実態(慣行)からカットの合意を推認する構成をとる。
事件番号: 昭和37(オ)1452 / 裁判年月日: 昭和40年2月5日 / 結論: 破棄差戻
月掛生命保険外務職員のストライキを理由として、当該職員に支給すべき給与のうちから特定項目の給料を削減したことの適否を判断するにあたり、かかる削減を行なうことのできる特段の事情があるかどうか、それがないとすれば、右給料が拘束された勤務時間に応じて支払われる賃金としての性格を有するかどうかを審究することなく、単に、勤務時間…