一 一般放送事業等を営む株式会社の労働組合が十数波にわたる時限ないし指名ストライキ及び放送業務の中枢部門における新勤務拒否闘争等の争議行為を行つたが、会社はこれらのストライキの一部を事前に予測して応急措置を講ずることができ、また、新勤務拒否闘争によつて具体的な放送業務の障害又は放送事故は発生せず、そのような事故等の発生する具体的な緊迫した危険もなかつたなど、判示の事実関係のもとでは、ロックアウト突入当時の会社の全部門の観点からみれば、いまだ労使の勢力の均衡が破れて使用者側が著しく不利な圧力を受けている情勢にあつたということはできず、右争議行為に対して会社が本柱社屋全体についてした全面ロックアウトは、組合の争議行為に対する対抗防衛手段として相当性を欠き、違法である。 二 会社が本社社屋の重要部分をバリケード及び有刺鉄線で囲んで組合員の立入りを禁止したなど判示の事実関係のもとでは、本社社屋全体について一体不可分のロックアウトがされたものというべきであるから、本件ロックアウトの一部を部分ロックアウトとして可分的にその効力を判断することは許されない。
一 ロックアウトが違法とされた事例 二 ロックアウトの一部を部分ロックアウトとして可分的に効力を判断することが許されないとされた事例
労働組合法8条,労働関係調整法7条
判旨
使用者のロックアウトは、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当と認められる場合に限り正当な争議行為として認められ、その期間中の賃金支払義務を免れる。本件では、労働者側の争議行為が平穏かつ限定的であり、使用者側が著しく不利な圧力を受けていたとはいえないため、ロックアウトの相当性を欠き違法とされる。
問題の所在(論点)
使用者が行うロックアウトが正当な争議行為として是認され、対象労働者に対する賃金支払義務を免れるための要件、および一体として行われたロックアウトの正当性を一部の部門についてのみ限定的に認めることの可否。
規範
ロックアウトの正当性は、労使間の交渉態度・経過、組合側の争議行為の態様、使用者側の受ける打撃の程度等の具体的諸事情に照らし、衡平の見地から「労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当」と認められるか否かにより決すべきである。相当性が認められる場合には、使用者はロックアウト期間中の賃金支払義務を免れる。また、施設全体を閉鎖する形態で行われたロックアウトは不可分な一体のものとして判断すべきであり、一部の部門についてのみ可分的に正当性を認めることはできない。
重要事実
放送事業を営む会社において、労働組合が賃上げや配置転換に反対し、数回にわたる短時間のストライキや残業拒否、新勤務拒否(旧勤務体制での就労)を行った。会社はこれに対し、本社社屋の重要部分をバリケードで封鎖する全面的なロックアウトを約2ヶ月間実施した。当時、組合側の態度は罵倒や威嚇を伴わず平穏なものであり、新勤務拒否もテレシネ課等の一部部門に限定され、具体的な放送事故や業務の重大な停滞は生じていなかった。また、会社は過去の激しい紛争時にもロックアウトを行わずに解決した実績があった。
あてはめ
本件の組合側の争議行為は、態様が平穏であり、新勤務拒否等の活動も放送業務の中枢であるテレシネ課に限られ、非組合員による代替で放送が継続されるなど具体的・緊迫した危険を生じさせていない。また、休日出勤拒否等に対しても会社は事前対応が可能であった。以上から、本社全部門の観点で見れば、労使の勢力の均衡が破れ、会社側が著しく不利な圧力を受けていたとは評価できない。したがって、全面的なロックアウトを強行することは対抗防衛手段として相当性を欠く。さらに、社屋全体を封鎖した態様から、これをテレシネ課に対する部分的なロックアウトとして切り離して正当化することも許されない。
結論
本件ロックアウトは正当な争議行為とは認められず、会社はロックアウト期間中の賃金支払義務を免れない。
実務上の射程
ロックアウトの正当性判断におけるリーディングケースである。答案上は、まず賃金請求権の根拠(労働契約)を挙げた上で、ロックアウトによる受領拒否の正当性の検討において、本判例の「対抗防衛手段としての相当性」の枠組みを用いる。特に「勢力の均衡の回復」という目的と、あてはめにおける「具体的打撃の程度」の相関関係に留意して論述する。
事件番号: 昭和47(オ)440 / 裁判年月日: 昭和52年2月28日 / 結論: 棄却
組合がその組合員数を半減し力も弱くなつていたのに対し、会社(タクシー会社)はD組合員等によつてタクシーの車両数も増やして平常に近い営業を行い、その経営内容も著しく改善されるなど判示の事情があるときは、組合の就労要求を拒否した時点以降会社が継続したロツクアウトは、使用者の正当な争議行為と認められず、会社は右時点以降の賃金…