一 労働者が生理休暇を取得することにより精皆勤手当等の経済的利益を得られない結果となる措置は、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、生理休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、生理休暇の取得を著しく困難にし、労働基準法(昭和六〇年法律第四五号による改正前のもの)六七条の規定が特に設けられた趣旨を失わせると認められるものでない限り、同条に違反しない。 二 出勤不足日数によつて支給の有無又は額が決定される精皆勤手当の算定に当たり生理休暇取得日数を右出勤不足日数に算入する措置は、右手当が、法定の要件を欠く生理休暇及び自己都合欠勤を減少させて出勤率の向上を図ることを目的として設けられたものであり、出勤不足日数のない場合には一か月当たり五〇〇〇円支給され、同日数が一日の場合三〇〇〇円、二日の場合一〇〇〇円に順次減額され、三日以上の場合には支給されないこととなるが、生理休暇取得者には最も少額の者でも一日一四六〇円の基本給相当額の不就業手当が別に支給されるなど判示の事実関係のもとにおいては、生理休暇の取得を著しく困難にし、労働基準法(昭和六〇年法律第四五号による改正前のもの)六七条の規定が特に設けられた趣旨を失わせるとは認められないものとして、同条に違反しない。
一 労働者が生理休暇を取得することにより精皆勤手当等の経済的利益を得られない結果となる措置と労働基準法(昭和六〇年法律第四五号による改正前のもの)六七条 二 精皆勤手当の算定に当たり生理休暇取得日数を出勤不足日数に算入する措置が労働基準法(昭和六〇年法律第四五号による改正前のもの)六七条に違反しないとされた事例
労働基準法(昭和60年法律第45号による改正前のもの)67条
判旨
生理休暇取得日を精皆勤手当の欠勤日数に算入する措置は、取得を著しく困難にし、労働基準法が女子労働者の保護を目的として生理休暇を設けた趣旨を失わせるものと認められない限り、同法67条に違反しない。
問題の所在(論点)
生理休暇の取得日を精皆勤手当の算定において欠勤扱いとし、経済的不利益を課す労使間の合意が、労働基準法67条の生理休暇の規定に反し無効とならないか。
規範
生理休暇は有給であることまで保障したものではなく、出勤扱いにするかは労使間の合意に委ねられる。もっとも、取得を理由に不利益を課す措置が、その趣旨・目的、労働者が失う経済的利益の程度、取得に対する事実上の抑止力の強弱等を総合考慮し、生理休暇の取得を著しく困難とし、同法が女子労働者の保護を目的として同休暇を設けた趣旨を失わせるものと認められる場合には、同法67条に違反し無効となる。
重要事実
被告会社は、一部の女子従業員の生理休暇取得率が著しく高く、生産性低下による経営悪化が生じたため、出勤率向上を目的に精皆勤手当を新設した。同手当の算定にあたり、労使間の合意に基づき、生理休暇取得日を欠勤日数に算入した。その結果、生理休暇を取得すると精皆勤手当が減額され、付随して賞与や時間外手当の単価も減少したが、他方で会社は生理休暇に対し基本給相当額の不就業手当を別途支給していた。
あてはめ
まず、本件措置は不適切な生理休暇等の減少による出勤率向上を目的としており、取得の一般的抑制を意図したものではない。次に、不就業手当の支給があることや、平均的な欠勤率に照らせば生理休暇取得のみが手当喪失の直結要因とは断定しがたいこと、手当額も他企業と比較して著しく高額ではないことを考慮すれば、失われる経済的利益の程度は過大とはいえない。したがって、本件措置が休暇取得を著しく困難にするものとは認められず、法67条の趣旨を没却させるものとはいえない。
結論
本件の精皆勤手当の算定方法は、労働基準法67条に違反せず、公序良俗等にも反しないため有効である。
実務上の射程
生理休暇のみならず、育児休業等、法律上の休暇取得を理由とする不利益取扱い全般の限界を画する際のリーディングケースである。答案では、単なる不利益の有無ではなく、その「程度」と「趣旨没却」の有無を判断要素として用いる。
事件番号: 昭和55(オ)379 / 裁判年月日: 昭和58年11月25日 / 結論: 破棄差戻
使用者が就業規則中の「女子従業員は毎月生理休暇を必要日数だけとることができる。そのうち年間二四日を有給とする。」との規定の後段を「そのうち月二日を限度とし、一日につき基本給の一日分の六八パーセントを補償する。」と一方的に変更した場合において、右変更が合理的なものであるか否かを判断するに当たつては、変更の内容及び必要性の…