上告人と被上告人とが昭和二三年四、五月ごろ以降全くの別居状態にあり、事実上夫婦生活を営んでいないこと、右両名が昭和三七年三月三〇日の家事調停において、上告人が昭和二四年六月一一日付の届出をもつてなされた無効の協議離婚を認めることを前提にして、上告人が被上告人から右離婚にもとづく慰藉料の支払を受ける旨の合意をした等の事実完結のもとにおいては、上告人が右家事調停の際に、右無効の協議離婚を追認したと認めるものが相当である。
無効の協議離婚の追認があつたと認められた事例
民法764条,民法739条,民法765条
判旨
無効な協議離婚であっても、後に当事者がその離婚を前提として慰謝料支払の合意をするなどの事情があれば、当該離婚を追認したものと認められ、届出の時に遡って有効となる。
問題の所在(論点)
協議離婚が無効である場合において、後になされた離婚を前提とする慰謝料支払の調停成立により、当該離婚を追認したと認められるか。
規範
身分上の行為は真実の意思に基づくべきであるが、無効な行為であっても、当事者が後にその事実を前提として新たな法的合意を行うなど、実質的な身分関係の形成を容認したと認められる特段の事情がある場合には、追認により遡及的に有効となり得る。
重要事実
上告人と被上告人は、昭和23年頃から長期間別居し、事実上の夫婦生活がない状態にあった。昭和24年に協議離婚の届出がなされたが、後にその有効性が争われた。しかし、昭和37年に家庭裁判所の家事調停において、上告人は当該協議離婚が有効であることを前提として、被上告人から離婚に伴う慰謝料3万円の支払を受ける旨の合意を成立させた。
あてはめ
上告人と被上告人は10年以上の長期間別居しており、夫婦としての実体は既に失われていた。その状況下で、上告人は家事調停において自ら離婚を認め、その対価ともいえる慰謝料の受領に合意している。この事実は、上告人が当初の離婚届出による身分変動を確定的に受け入れ、追認する意思を有していたことを示すものと評価できる。
結論
上告人は家事調停の際に協議離婚を追認したものと認められ、当該離婚は有効である。
実務上の射程
無効な身分行為の追認に関するリーディングケースである。答案上では、身分行為の無効を原則としつつも、実体関係との乖離を解消する必要がある場合に、本判例を根拠に「追認」を認め、遡及的有効性を肯定する構成で用いる。特に離婚届の偽造等が問題となる事案で、その後の事情から有効性を導く際の論拠となる。
事件番号: 昭和32(オ)508 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
合意により協議離婚届書を作成した一方の当事者が、届出を相手方に委託した後、協議離婚を飜意し、右飜意を市役所戸籍係員に表示しており、相手方によつて届出がなされた当時、離婚の意思を有しないことが明確であるときは、相手方に対する飜意の表示または届出委託の解除の事実がなくとも、協議離婚届出が無効でないとはいえない。