一、婚姻の継続中に、自己の意思に基づかないでほしいままに協議離婚届を偽造、行使され、真実に反する離婚の事実を戸籍に記載された者がこれによつて損害を生じたときは、不法行為が成立し、該行為者は被偽造者に対して損害賠償の義務を負担する。 二、離婚無効の訴は人事訴訟に属し、人事訴訟手続法の規定が準用され、その判決の効力は第三者に対しても及ぶものと解すべきである。
一、離婚届を偽造して届出をした者と不法行為の成否 二、離婚無効の訴と人事訴訟手続法の準用
民法709条,民法764条,戸籍法76条,人事訴訟手続法18条
判旨
自己の意思に基づかずに離婚届を偽造・行使され、真実に反する離婚の事実を戸籍に記載された者は、人格的自由を侵害されたものとして、不法行為に基づき慰謝料および訴訟費用相当額の損害賠償を請求できる。
問題の所在(論点)
意思に基づかない離婚届の偽造・戸籍記載がなされた場合において、法律上の離婚が成立しない(無効である)にもかかわらず、不法行為に基づく損害賠償請求が可能か。また、離婚無効確認訴訟の訴訟手数料は不法行為による損害に含まれるか。
規範
婚姻継続中に、自己の意思に基づかずほしいままに離婚届を偽造・行使され、真実に反する離婚の事実を戸籍に記載されることは、それ自体によって「人格的自由」を侵害するものと解される。したがって、離婚が無効であり法律上の離婚が成立しない場合であっても、右行為は不法行為(民法709条)を構成し、加害者は精神的苦痛に対する慰謝料および当該侵害に由来する通常の財産的損害(訴訟手数料等)を賠償する義務を負う。
重要事実
上告人は、被上告人(配偶者)の意思に基づかないにもかかわらず、勝手に離婚届を偽造して提出し、戸籍に離婚の事実を記載させた。これに対し被上告人は、離婚無効の確認とともに、不法行為に基づく損害賠償(慰謝料10万円および第1・2審の訴訟手数料)を求めて提訴した。上告人は、離婚は無効であり法的効力が生じない以上、損害も発生しないと主張して争った。
あてはめ
上告人が被上告人の意思に反して離婚届を偽造・行使し、戸籍に虚偽の記載を行わせた行為は、被上告人の人格的自由を直接侵害するものである。無効な離婚届によって法的離婚が成立しないことは、侵害の事実を否定する理由にはならない。したがって、人格権侵害に伴う慰謝料10万円の請求は正当である。また、被上告人が身分関係を是正するために提起した離婚無効確認訴訟の訴訟手数料は、上告人の不法行為に由来する「通常の財産的損害」と認められるため、賠償の対象となる。
結論
上告人の行為は不法行為を構成し、被上告人に対し慰謝料および訴訟手数料相当額の賠償義務を負う。本件上告は棄却される。
実務上の射程
身分権・人格権侵害に関する不法行為の成否において、形式的な法的効力(離婚の有効性)の有無にかかわらず、戸籍等の公証制度を悪用した平穏な身分関係の攪乱自体を損害と認める点に意義がある。答案上は、訴訟費用(弁護士費用以外の手数料等)が相当因果関係のある損害に含まれることを示す際にも活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)847 / 裁判年月日: 昭和40年3月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】意思に基づかない離婚届によってなされた協議離婚は無効であり、その後に届け出られた婚姻は重婚となるため、前配偶者は当該婚姻の取消しを請求できる。 第1 事案の概要:被上告人の意思に基づかない離婚届が提出・受理され、形式上、被上告人と上告人A1との協議離婚が成立した。その後、上告人A1は上告人A2との…