合意により協議離婚届書を作成した一方の当事者が、届出を相手方に委託した後、協議離婚を飜意し、右飜意を市役所戸籍係員に表示しており、相手方によつて届出がなされた当時、離婚の意思を有しないことが明確であるときは、相手方に対する飜意の表示または届出委託の解除の事実がなくとも、協議離婚届出が無効でないとはいえない。
協議離婚届出書作成後の飜意と届出の効力。
民法763条,民法764条,民法742条,民法802条
判旨
協議離婚が有効に成立するためには、届出書作成時のみならず、市町村長へ届出がなされた当時においても当事者双方に離婚の意思が存する必要がある。したがって、届出時に一方が既に翻意していたことが明確であれば、その離婚は無効である。
問題の所在(論点)
協議離婚において、届出書作成時には合意があったものの、届出の受理以前に一方が翻意した場合、当該離婚は有効に成立するか。届出時点での離婚意思の要否が問題となる。
規範
協議離婚の届出(民法764条、739条)は、離婚の意思表示としての性質を有する。そのため、その効力が発生するためには、市町村長に対して届出がなされた当時において、当事者双方に離婚の意思(法律上の届出意思を含む)が存することを要する。届出当時、一方が既に離婚の意思を有していないことが明確である場合には、当該届出に基づく離婚は無効となる。
重要事実
被上告人と上告人は協議離婚の合意に基づき離婚届書を作成し、被上告人はその届出を上告人に委託して保管させていた。しかし、上告人が届出書を光市長に提出する前日、被上告人は市役所の係員に対し「離婚届が出されるかもしれないが、承諾したものではないから受理しないでほしい」旨を申し出た。その後、上告人によって届出書が提出された。
あてはめ
被上告人は届出書が提出される前日に、市役所係員に対し不受理の申し入れを行っている。この事実は、届出のあった前日に被上告人が協議離婚を翻意していたことを明確に示すものである。そうである以上、上告人によって届出がなされた当時、被上告人には離婚の意思がなかったといえる。相手方への直接の表示や届出委託の解除がなされていなくとも、届出時において本人の意思に基づかない以上、意思の欠如は明白である。
結論
届出時に離婚意思がないことが明確である以上、本件協議離婚は無効である。
実務上の射程
離婚届作成時と届出時でタイムラグがある場合、後者の時点での意思を重視する「届出時説」を確定させた判例である。答案上は、届出を「意思表示」と構成し、翻意の事実(特に不受理申出や別居の開始等)を拾って、届出時点での意思の欠如を論証する際に用いる。
事件番号: 昭和30(オ)456 / 裁判年月日: 昭和31年6月26日 / 結論: 棄却
原告が被告に対し裁判上の離婚を求める意思があるからといつて、協議離婚の無効確認を求める利益がないということはできない。