当事者の意思に基づかない離婚届が受理されたことによる協議離婚は、その無効を確認する審判又は判決の確定をまつまでもなく、当然無効である。
届出意思を欠いた協議離婚の無効の性質、
民法742条
判旨
当事者の意思に基づかない離婚届によってされた無効な協議離婚は、審判や判決の確定を待たず当然に無効であり、その確定前であっても後婚の取消しを請求することができる。
問題の所在(論点)
意思に基づかない無効な協議離婚がなされた後、その無効を確認する審判や判決が確定する前であっても、当該離婚が無効であることを前提として後婚の取消し(重婚を理由とする取消し)を請求できるか。
規範
当事者の意思に基づかない届出によってなされた協議離婚は、当然に無効である。したがって、当該無効を確認する審判または判決の確定を待つまでもなく、その効力の不存在を前提として、後婚が重婚にあたることを理由とする取消し等の主張をすることが可能である。
重要事実
被上告人(夫)とD(妻)との間で協議離婚の届出がなされたが、これは被上告人の意思に基づかない無効なものであった。その後、Dは別の相手方と後婚を届け出たため、被上告人は当該離婚が無効であり、前婚が継続していることを前提として、後婚の取消しを求めた。
あてはめ
本件における協議離婚は、被上告人の意思に基づかない届出によってなされたものである。このような婚姻意思(離婚意思)を欠く届出による離婚は、公法上の外形が整っていても実体法上は「当然無効」と解される。したがって、確定判決による無効宣言を待たずとも離婚の効力は発生していないといえる。そうであれば、前婚は依然として存続していることになり、その後にされた婚姻は重婚(民法732条違反)の状態にある。ゆえに、取消請求権者は直ちに取消しを求めることができる。
結論
当然無効な協議離婚の後にされた婚姻については、離婚無効の判決等の確定前であっても、その取消しを請求することが許される。
実務上の射程
婚姻・離婚の届出に関する「当然無効」の理を明示したものである。実務上、重婚を理由とする取消請求の前提として離婚無効を主張する場合、先行して離婚無効確認の訴えを提起し確定させる必要がないことを示しており、手続の簡略化に資する判断である。
事件番号: 昭和32(オ)508 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
合意により協議離婚届書を作成した一方の当事者が、届出を相手方に委託した後、協議離婚を飜意し、右飜意を市役所戸籍係員に表示しており、相手方によつて届出がなされた当時、離婚の意思を有しないことが明確であるときは、相手方に対する飜意の表示または届出委託の解除の事実がなくとも、協議離婚届出が無効でないとはいえない。