事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかないで婚姻届を作成提出した場合において、当時右両名に夫婦としての実質的生活関係が存在しており、かつ、のちに他方の配偶者が届出の事実を知つてこれを追認したときは、右婚姻は追認によりその届出の当初に遡つて有効となると解すべきである。
届出意思の欠缺による婚姻の無効とその追認の効力
民法742条1号,民法116条
判旨
当事者間に夫婦としての実質的生活関係が存在し、一方の無断届出により受理された婚姻届につき、後に他方がこれを追認したときは、その婚姻は届出の当初に遡って有効となる。
問題の所在(論点)
届出意思を欠くため無効な婚姻(民法742条1号)について、事後の追認によって遡及的に有効となるか。また、その追認に方式を要するか。
規範
事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかずに婚姻届を作成提出した場合であっても、当時両名に夫婦としての実質的生活関係が存在し、後に他方が右届出の事実を知ってこれを追認したときは、民法116条本文の類推適用により、婚姻は届出時に遡って有効となる。追認は、必ずしも要式を必要とせず、黙示的になされることも許容される。
重要事実
被上告人(妻)は、上告人(夫)の承諾なく署名押印して婚姻届を提出した。当時、両名には夫婦としての実質的生活関係があった。上告人は、約1年半後に届出の事実を知った後も、別居するまでの約6年半にわたり同居を継続した。その間、上告人は税務申告書に被上告人を妻と記載し、長女の結婚披露宴に夫婦として列席し、共済組合の家族認定にも異議を述べず被上告人に組合員証を使用させるなど、婚姻を容認する態度を示していた。上告人は別居から約4年後に婚姻無効の調停を申し立てた。
あてはめ
上告人と被上告人の間には、届出当時から実質的な夫婦生活が存在していた。上告人は、届出を知った後も長期間にわたり被上告人を妻として扱い、公的な書類への記載や親族の行事への同伴、共済組合の扶養関係の維持など、客観的に婚姻関係を承認していると評価できる行動を継続している。これらの一連の態度は、無効な婚姻を黙示に追認したものといえ、実質的生活関係を重視する身分関係の本質や第三者の信頼保護の観点からも、追認による有効化を認めるのが相当である。
結論
本件婚姻は上告人の追認により、届出時に遡って有効となる。したがって、上告人の婚姻無効の主張は認められない。
実務上の射程
婚姻だけでなく、養子縁組等の創設的身分行為全般に射程が及ぶ。民法119条の例外として、無権代理行為の追認(116条)を類推適用するロジックは答案上重要。黙示の追認を認めるため、あてはめでは生活実態の継続期間や、外部に対する「夫婦としての振る舞い」を具体的事実から拾う必要がある。
事件番号: 昭和43(オ)119 / 裁判年月日: 昭和43年5月24日 / 結論: 棄却
(省略)