農地法第三条または第五条にもとづく知事の許可は、農地法の立法目的に照らして、当該農地の所有権の移転等につき、その権利の取得者が農地法上の適格性を有するか否かの点のみを判断して決定すべきであり、それ以上に、その所有権の移転等の私法上の効力やそれによる犯罪の成否等の点についてまで判断してなすべきではない、と解するのが相当である。
農地法第三条または第五条にもとづく知事の許可とその判断事項
農地法3条,農地法5条
判旨
農地の二重譲渡において、後次の買受人が先に仮登記を経由した場合、前次の買受人が先に知事の許可及び本登記を得ていても、後次の買受人が将来許可を得て本登記をなす可能性がある限り、当該仮登記は有効である。また、農地法上の許可は、権利取得者の適格性の有無のみを判断すべきものであり、私法上の効力や犯罪の成否まで判断するものではない。
問題の所在(論点)
農地の二重譲渡において、農地法上の許可を先に得て本登記を備えた第一買受人と、それより前に仮登記を備えた第二買受人の優劣、および当該仮登記の有効性。また、農地法上の許可の判断範囲が問題となる。
規範
1. 請求権保全の仮登記に基づき本登記がなされた場合、その順位保全的効力により、仮登記後本登記までになされた処分行為は、本登記された権利と抵触する限度で失効する。 2. 農地法3条又は5条に基づく許可は、権利取得者が農地法上の適格性を有するか否かのみを判断基準とすべきであり、私法上の効力の優劣や犯罪の成否を判断の対象とするものではない。
重要事実
Dは、本件農地を上告人に売却し(第1譲渡)、その後被上告人にも売却した(第2譲渡)。被上告人は第2譲渡に基づき、所有権移転請求権保全の仮登記を先に経由した。一方、上告人はその後に知事の許可を受け、所有権移転の本登記を経由した。被上告人は未だ知事の許可も本登記も受けていなかったため、上告人は、自己が先に許可と本登記を得た以上、被上告人の仮登記は無効であると主張して争った。
あてはめ
被上告人は、上告人が本登記を経由するより前に、本件農地について所有権移転請求権保全の仮登記を経由している。被上告人が将来的に知事の許可を得て本登記を具備する可能性が否定できない以上、仮登記の順位保全的効力が及ぶ余地がある。したがって、現時点で上告人が対抗要件を備えていたとしても、被上告人の仮登記を無効と解することはできない。また、上告人は許可の先後で優劣が決まると主張するが、許可制度の趣旨は適格性の判断にあり、私法上の優劣を確定させるものではないため、その主張は採用できない。
結論
被上告人の仮登記は有効であり、将来許可を得て本登記がなされれば上告人の権利取得は否認される。上告人の請求は認められない。
実務上の射程
農地法上の許可が停止条件とされる場合であっても、仮登記による順位保全の効力は一般の不動産と同様に認められることを示した。農地の二重譲渡事案において、対抗問題の決着が「登記の先後」によることを再確認しつつ、許可という公法上の要件が私法上の優劣を直接左右しないことを明示する際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和40(オ)992 / 裁判年月日: 昭和41年9月29日 / 結論: その他
甲所有の山林につき国がいわゆる未墾地買収をした後、乙が甲から右山林を二重に譲り受けてその旨の所有権取得登記をした場合には、右取得登記以前に国から売渡を受けた丙が右山林の登記簿を閉鎖することなく、新たに所有権保存登記を了していたとしても、右保存登記は二重登記であつて効力がないから、結局、丙は右山林の所有権取得をもつて乙に…
事件番号: 昭和42(オ)429 / 裁判年月日: 昭和42年10月27日 / 結論: 棄却
農地を目的とする売買契約締結後に、売主が目的物上に土盛りをし、その上に建物が建築され、そのため農地が恒久的に宅地となつた等買主の責に帰すべからざる事情により農地でなくなつた場合には、右売買契約は、知事の許可なし完全に効力を生ずると解するのが相当である。
事件番号: 昭和34(オ)642 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の許可を停止条件とする農地の売買契約において、地目が畑であり実態が農地であると認められる場合には、その性質に基づき適法な事実認定がなされるべきである。 第1 事案の概要:被上告人らは、上告人から本件土地を北海道知事の許可を停止条件として買い受けた。本件土地の地目は「畑」であり、原審において…
事件番号: 昭和41(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和42年7月21日 / 結論: 棄却
地方公共団体の技術吏員は、知事から、その権限に属する事務の一部を特定して、委任をうけ、または授権された場合にかぎり、自己の名においてまたは知事を代理して、知事の権限を行使することができる。