かりに株式会社の清算手続が清算人ひとりですることができるとしても、その清算人は、特段の事情のないかぎり清算会社と取引することができず、これに違反する取引は無効である。
一 理由不備の違法があるとされた事例 二 株式会社の一人の清算人がした自己あてにした取引の効力
民訴法395条1項6号,商法430条2項,商法265条
判旨
清算中の株式会社の清算人が、清算会社と取引をする場合、特段の事情がない限り、会社法上の利益相反取引(会社法356条1項2号、482条4項等)と同様に禁止され、これに違反した取引は無効となる。
問題の所在(論点)
1. 清算中の会社が解散前と同様の貸付行為を継続することの可否。 2. 清算人と清算会社との間の自己取引(債権譲渡)の有効性。
規範
1. 清算中の会社は、清算の目的の範囲内においてのみ権利能力を有し、清算人が解散前と同様の貸付業務を行うには、それが清算事務の遂行に必要であることが要求される。 2. 清算人が清算会社と取引を行うことは、特段の事情のない限り許されず、これに違反してされた取引は無効である。
重要事実
株式会社D(以下「D社」)は、設立登記(昭和33年6月17日)を経て、同33年9月20日に解散登記がなされた。清算人である被上告人は、D社の解散後、上告人に対し、D社の清算人として(あるいは個人として)貸付や弁済の受領等の業務を継続した。さらに、被上告人はD社が上告人に対して有していた貸金債権を、自ら(清算人個人)に対して譲渡する旨の債権譲渡を行い、その後に債権譲渡通知をなした。原審は、清算人が一人であること等の実態に照らし、会社や債権者を害さないとして本件債権譲渡を有効と判断した。
あてはめ
1. 清算中の会社は清算の目的の範囲内でのみ権利能力を有するため(旧商法430条1項等)、本件貸付が清算事務の遂行に必要であるとの理由がない限り、当然に貸付を継続することはできない。 2. 清算人が会社債権を自己に譲渡する行為は、清算会社と清算人の間の取引にあたる(旧商法430条2項、265条参照)。会社の実態が清算人一人であったとしても、それだけでは「特段の事情」にはあたらず、利益相反取引の制限に服する。したがって、取締役会等の承認(現行法下では株主総会等の承認)を欠くなどの事情がある限り、当該譲渡は無効と解される。
結論
清算事務の遂行に必要であるとの理由の提示や、利益相反取引を有効とする「特段の事情」の認定がないまま、貸付や債権譲渡を有効とした原判決には理由不備および法解釈の誤りがある。
実務上の射程
清算手続き中の会社であっても権利能力の制限(清算目的の範囲内)が及ぶこと、および清算人と会社間の取引について利益相反取引規制が準用されることを示した。答案上は、解散後の清算人の独走を抑止する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和44(オ)610 / 裁判年月日: 昭和45年3月12日 / 結論: 棄却
取締役が会社を代表して債権者に対し連帯保証契約を締結する行為は、商法二六五条にいう取引にあたる。 (意見がある。)