一、株式会社の清算人の員数は、二人以上であることを要しない。 二、上告審が差戻判決において破棄理由とした法律上の判断に従つてされた下級審の判決に対する再度の上告事件につき審判をする上告審はその差戻判決に示された右判断に拘束される。
一、株式会社の清算人の員数 二、上告審が破棄理由とした法律上の判断の再度の上告審に対する拘束力
商法430条,裁判所法4条,民訴法407条1項,民訴法407条2項
判旨
株式会社の清算人が1人の場合でも当然に代表権を有するが、当該清算人が会社を代表して自身に債権を譲渡する行為は、特段の事情がない限り自己取引として無効である。
問題の所在(論点)
株式会社の清算人が1人の場合に代表権が認められるか。また、清算人が会社を代表して自身に対し債権譲渡を行う行為(自己取引)の効力、および上告審の差し戻し判決の拘束力が問題となる。
規範
株式会社の清算人は、法律上1人でも選任可能であり、その場合は当然に会社を代表する。しかし、清算人が会社を代表して自身と取引を行う場合、旧商法265条(現行会社法356条1項2号・361条等参照)の規定が準用され、特段の事情のない限り、当該取引は無効となる。また、上告審の破棄差戻判決による法律上の判断は、後の裁判所を拘束する。
重要事実
訴外D商工株式会社は昭和33年に解散し、上告人が唯一の清算人に選任された。上告人は、清算登記後に会社を代表して、被上告人に対する貸金債権を上告人自身に譲渡した(本件債権譲渡)。差戻前の原審は清算人の員数不足等を理由に譲渡を無効としたが、最高裁は以前の差戻判決において、自己取引の観点から特段の事情がない限り無効であるとの判断を示していた。
あてはめ
清算人は1人でも代表権を有するが、本件債権譲渡は清算人が会社を代表して自身に対して行った自己取引である。旧商法265条の趣旨に基づき、利益相反の危険があるため原則として無効である。本件において、全証拠に照らしても同条の適用を排除すべき「特段の事情」を認めるに足りる事実は存在しない。また、先行する最高裁の差戻判決が示した法律上の判断は、本件審理を拘束するため、これに反する主張は認められない。
結論
本件債権譲渡は無効であり、上告人の請求は棄却される。清算人が1人の場合に代表権が認められるとしても、自己取引の無効という結論に影響はない。
実務上の射程
清算人の代表権の有無と自己取引の制限を区別して論じる際の基礎となる。特に、清算人が1人の場合の代表権を肯定しつつ、利益相反取引の規制(会社法419条、356条等の準用)が及ぶことを示す実務上の指針となる。
事件番号: 平成19(受)1219 / 裁判年月日: 平成21年4月17日 / 結論: その他
株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合,当該会社以外の者が取締役会の決議を経ていないことを理由にその無効を主張することは,当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り,許されない。