明治二三年当時における法制下においても、登記は公示方法に過ぎず、所有権移転の要件ではないと解すべきである。
明治二三年当時における登記の効力
民法177条
判旨
明治23年当時の法制下においても、不動産の所有権移転は売買契約の成立によって生じ、登記は対抗要件(公示方法)であって権利移転そのものの効力発生要件ではない。
問題の所在(論点)
明治23年当時の法制において、不動産売買に伴う所有権移転に登記が必要か(所有権移転の効力発生要件の意義)。
規範
不動産の売買契約が締結された場合、特段の事情がない限り、その契約の成立によって所有権は買主に移転する。登記はあくまで公示方法に過ぎず、所有権移転の効力そのものを左右する要件ではない。
重要事実
明治23年、上告人の先々代(亡D)と被上告人(旧陸軍省所轄)との間で本件各土地の売買契約が成立した。本件土地の引き渡しおよび売買代金の支払いは完了していたが、上告人側は、当時の法制下では登記がなければ所有権は移転しない旨を主張し、被上告人の所有権取得を争った。また、本件請求が信義則違反や権利濫用に該当するとも主張した。
あてはめ
事件番号: 昭和46(オ)1158 / 裁判年月日: 昭和47年11月28日 / 結論: 棄却
土地の売買契約において、買主が代金を五年間にわたつて分割支払い、その完済後売主が所有権移転登記をなし、その支払期間中の公租公課を買主が負担する旨約された場合には、右買主の公租公課負担義務は付随義務とはいえず、売主はこの義務不履行を理由に契約を解除することができる。
本件売買契約が締結された明治23年当時の法制に照らしても、登記は第三者に対する公示方法(対抗要件)としての性質を持つに留まり、当事者間における所有権移転の効力発生要件ではないと解するのが相当である。本件では、契約成立、引渡し、代金支払という実体的な権利移動の事実が認められる以上、登記の有無にかかわらず被上告人に所有権が移転したと認められる。また、被上告人による本訴請求について、記録上、信義則違反や権利濫用を肯定すべき事情は見当たらない。
結論
本件各土地の所有権は売買契約により被上告人に移転しており、上告人の主張(登記必要説および権利濫用等の抗弁)は認められない。
実務上の射程
意思主義(民法176条)の法理が、現行民法施行前の取引についても同様に適用されることを確認した判例である。答案上は、登記が効力発生要件ではなく対抗要件に過ぎないという原則論を補強する文脈や、旧法下の不動産取引の有効性を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)468 / 裁判年月日: 昭和46年11月5日 / 結論: 破棄差戻
不動産が二重に売買された場合において、買主甲がその引渡を受けたが、登記欠缺のため、その所有権の取得をもつて、のちに所有権取得登記を経由した買主乙に対抗することができないときは、甲の所有権の取得時効は、その占有を取得した時から起算すべきものである。
事件番号: 昭和31(オ)172 / 裁判年月日: 昭和33年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産登記は物権変動の対抗要件にすぎず、第三者が登記名義を有しない実体上の所有者を認め、登記名義人への権利帰属を否認することは妨げられない。また、未登記不動産の譲受人が直接自己名義で行った所有権保存登記は、現在の権利状態と符合する限り有効である。 第1 事案の概要:本件土地は実質的にA1の所有であ…
事件番号: 昭和41(オ)1012 / 裁判年月日: 昭和44年2月27日 / 結論: 棄却
不動産の譲受人を債権者とし譲渡人を債務者として右不動産について処分禁止の仮処分登記が経由され、その後第三者に対する所有権移転登記が経由された場合において、仮処分債権者たる譲受人より譲渡人に対する本案訴訟としての所有権移転登記手続請求の訴と右第三者に対する所有権取得登記の抹消登記手続請求の訴とが併合して審理され、仮処分債…
事件番号: 昭和43(オ)921 / 裁判年月日: 昭和44年3月6日 / 結論: 棄却
(省略)