土地の売買契約において、買主が代金を五年間にわたつて分割支払い、その完済後売主が所有権移転登記をなし、その支払期間中の公租公課を買主が負担する旨約された場合には、右買主の公租公課負担義務は付随義務とはいえず、売主はこの義務不履行を理由に契約を解除することができる。
土地の売買契約において買主が負つた公租公課の負担義務と付随義務
民法415条,民法541条,民法555条
判旨
売買契約において公租公課の負担が単なる付随的債務にとどまらず、契約の重要な内容を構成する場合には、その不履行を理由とする契約解除が認められる。
問題の所在(論点)
売買契約における公租公課の負担義務が、契約の解除を基礎付ける「主たる債務」に該当するか、それとも解除が認められない「付随的債務」にすぎないか。
規範
債務不履行を理由とする契約解除(民法541条)が認められるためには、不履行となった債務が契約の目的を達成する上で不可欠な「主たる債務」であることを要する。一方、契約の目的達成に直接影響しない「付随的債務」の不履行にすぎない場合は、原則として解除は認められない。債務がどちらに該当するかは、契約の文言のみならず、契約締結の経緯、目的、諸条件を総合考慮して判断すべきである。
重要事実
上告人と相手方との間で売買契約が締結された。その際、当該物件にかかる公租公課の負担に関する合意がなされたが、上告人はこの公租公課の支払義務を履行しなかった。相手方は、この公租公課負担義務の不履行を理由として、売買契約全体の解除を主張した。
事件番号: 昭和35(オ)507 / 裁判年月日: 昭和37年12月25日 / 結論: 棄却
意思表示に際し、動機が表明されなくても、該動機が意思表示の内容とされていないと認めるときは、動機に存する錯誤は意思表示を無効ならしめない。
あてはめ
本件売買契約において、公租公課の負担は単なる事務的な取り決めや付随的な事項にとどまるものではない。原審(第一審を含む)の認定によれば、当該債務は契約の重要な要素として組み込まれており、契約の目的達成に密接に関わる性質を有していた。したがって、公租公課の不履行は付随的債務の不履行とはいえず、契約の根幹に関わる債務不履行に該当すると評価される。
結論
本件公租公課の負担義務は付随的債務ではないため、その不履行を理由とする売買契約の解除は有効である。
実務上の射程
契約解除の可否を論じる際、債務の重要性を判断する基準として活用できる。特に「付随的債務」か否かの認定において、事案の具体的な合意内容に踏み込んで「主たる債務」性を肯定し、解除を認めた事例として重要である。実務上は、公租公課のような金銭的負担も、合意の態様次第で解除原因となり得ることを示す。
事件番号: 昭和42(オ)348 / 裁判年月日: 昭和42年12月15日 / 結論: 棄却
明治二三年当時における法制下においても、登記は公示方法に過ぎず、所有権移転の要件ではないと解すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)258 / 裁判年月日: 昭和32年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】催告期間内に「本旨に従う履行の提供」がなされない限り、解除権の発生を妨げることはできず、期間経過後の履行提供は解除の効力を左右しない。また、特段の事情がない限り、有効な催告に基づく解除権の行使は権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は債務の履行を怠り、被上告人から相当期間を定めた催告…
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…
事件番号: 昭和38(オ)1179 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物を取得した第三者が建物買取請求権を行使する際、既に賃借人の債務不履行(賃料不払)により土地賃貸借契約が解除されている場合には、当該第三者は買取請求権を行使できない。 第1 事案の概要:上告人(第三者)は、借地上の建物を取得し、賃貸人に対して建物買取請求権を行使しようとした。しかし、その…