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本訴原告が土地の売渡によりその所有権を喪失したことを理由に本訴原告のその所有権に基づく請求を棄却するとともに反訴原告が右売渡を受けた買主の占有を基礎とする取得時効により右土地の所有権を取得したことを理由に反訴原告のその所有権に基づく請求を認容することが矛盾しないとされた事例
民法162条,民法187条,民訴法239条
判旨
不動産の時効取得者は、時効完成時の所有者に対して、登記なくして所有権の取得を対抗することができる。
問題の所在(論点)
不動産の時効取得者が、時効完成前の所有者に対し、登記なくしてその権利取得を対抗できるか(民法177条の「第三者」の範囲)。
規範
不動産の時効取得者は、当該不動産の時効完成前(占有継続中)にその所有権を有していた者(旧所有者)に対しては、民法177条の「第三者」に該当しないため、登記を経由することなく、時効による所有権取得を対抗することができる。
重要事実
上告人は、昭和26年12月10日に本件土地を訴外Dに売却した。Dは同年12月28日から昭和28年7月2日まで、被上告人らはその後昭和36年12月28日まで、本件土地を所有の意思をもって善意無過失で占有し続けた。被上告人らは、取得時効の完成に基づき、上告人に対し所有権を主張したが、上告人は登記の欠缺を理由にこれを争った。
事件番号: 昭和41(オ)629 / 裁判年月日: 昭和42年7月21日 / 結論: 棄却
不動産の取得時効完成前に原所有者から所有権を取得し時効完成後に移転登記を経由した者に対し、時効取得者は、登記なくして所有権を対抗することができる。
あてはめ
時効による権利取得は、時の経過という事実に伴う原始取得に近い性質を有し、時効完成時の所有者は時効取得者に対して直接の権利承継関係に立つ当事者と同視しうる。したがって、時効完成前の所有者は、時効完成後に新たに権利を取得した「第三者」には当たらない。本件において、被上告人らは善意無過失で10年間の占有を継続し時効を完成させており、時効完成時の所有者である上告人(またはD)に対し、登記なくして所有権を対抗できる。
結論
時効により不動産の所有権を取得した者は、時効完成前の所有者に対して登記なくしてその取得を対抗できるため、被上告人の請求は認められる。
実務上の射程
時効完成前の譲受人や相続人も「時効完成前の所有者」に含まれ、登記不要で対抗できる。これに対し、時効完成後の譲受人は「第三者」に該当するため、登記の先後で決する(二重譲渡類似の関係)。答案では、時効完成の前後で「第三者」該当性を分ける論理の出発点として活用する。
事件番号: 昭和42(オ)491 / 裁判年月日: 昭和43年11月19日 / 結論: 破棄自判
不動産を譲り受けた者がその旨の登記を経由しないうちに、右不動産について、第三者から、譲渡人を仮処分債務者とする処分禁止の仮処分が執行された場合においても、譲受人が登記なくして仮処分債権者にその権利取得を対抗しうる地位にあつたときは、右譲受人は、右仮処分の執行後も、仮処分債権者に対してその所有権の取得を対抗することができ…
事件番号: 昭和35(オ)405 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
不動産の不法占有者は民法第一七七条にいう第三者には当らない。
事件番号: 昭和30(オ)56 / 裁判年月日: 昭和31年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の不法占有者は、民法177条にいう「第三者」には該当せず、所有者は登記がなくても当該占有者に対して所有権を主張できる。また、換地予定地の特定は、地番の表示がなくても所在位置を図面等により示す方法で足りる。 第1 事案の概要:被上告人が所有権を主張する係争土地(換地予定地)について、上告人らが…
事件番号: 昭和42(オ)268 / 裁判年月日: 昭和43年10月29日 / 結論: 棄却
甲から不動産所有権の譲渡を受けた乙が、所有権取得登記未経由のまま、右不動産を丙に譲渡したのち、かさねてこれを丁に譲渡した場合において、丙は、自己の所有権取得登記を経由しないかぎり、その所有権取得を丁に対抗することができない。