原告所有地上に被告が権限なく建物を存置してこれを占有していることを理由として建物収去土地明渡を求める訴状が被告に送達されたときは、特別の事情がないかぎり、原被告間にもし当該土地賃貸借契約が存在するならば、これを解約する旨の意思表示がなされたものと解することができる。
建物収去土地明渡を求める訴状の送達により原被告間の土地賃貸借契約解除の意思表示がなされたと解しうるか。
民法617条
判旨
不法占有を理由とする土地明渡請求の訴状送達は、仮に有効な賃貸借契約が認められる場合には、特段の事情がない限り賃貸借の解約申入れの意思表示を包含するものと解される。
問題の所在(論点)
不法占有を前提とした土地明渡請求の訴状送達に、予備的な賃貸借契約の解約申入れ(または更新拒絶)の意思表示が含まれていると解することができるか。
規範
建物所有を目的とする土地賃貸借について、賃貸人が不法占有を理由に建物の収去及び土地の明渡を求めて提訴し、その訴状が賃借人に送達された場合、特段の事情がない限り、当該訴状の送達によって、仮に賃貸借関係が存するならばこれを終了させるという解約の意思表示がなされたものと解するのが相当である。
重要事実
原告(上告人)は、被告らが原告所有の土地上に権限なく建物を存置して占有していると主張し、被告らに対して家屋収去土地明渡を求める訴えを提起した。これに対し被告らは、土地賃貸借関係が存続していると主張して争った。原審は、当該訴状の送達をもって解約の意思表示があったと認め、上告人がこれを不服として上告した事案である。
事件番号: 昭和25(オ)445 / 裁判年月日: 昭和26年11月27日 / 結論: 棄却
一 賃貸借の解約申入をしたことを原因とする家屋明渡請求事件において、訴提起前の解約申入の事実が認められないとしても、訴の提起により解約申入の事実を認めることは差支えない。 二 右の場合、訴の提起に基き解約の効力を認めても、当事者の主張しない事実につき判断したものということはできない。
あてはめ
不法占有を理由とする明渡請求は、占有者の占有権原を全面的に否定するものである。しかし、訴訟において占有者が賃貸借の存在を主張して抗弁する場合、賃貸人の真意は、仮に賃貸借が存在するとしてもなお明渡を求める点にあると解される。したがって、明渡請求の訴状が被告に送達された事実は、特段の事情がない限り、有効な賃貸借関係を前提とした解約申入れの意思表示としても機能すると評価できる。
結論
訴状の送達により解約の意思表示がなされたものと解すべきであり、原判決に違法はない。
実務上の射程
賃貸借の終了原因(解約申入れ、更新拒絶、あるいは無断譲渡・転貸による解除等)を明示せずに不法占有を主位的に主張する場合であっても、訴状送達を意思表示の代用として構成できる。ただし、借地借家法上の正当事由の具備などは別途必要となる点に留意すべきである。
事件番号: 昭和26(オ)103 / 裁判年月日: 昭和28年10月23日 / 結論: 棄却
一 裁判所が証拠決定にもとずく証拠調を施行せず、また右決定の取消もしないで口頭弁論を終結しようとするにあたり、申請当事者においてこれに対し何ら異議を述べなかつたときは、当該証拠申請を放棄したものと解するのを相当とする。 二 賃貸人の提起した家屋明渡の訴の訴状に、賃貸借が解約申入によつて終了した経過を敍述し、その終了にか…
事件番号: 昭和36(オ)73 / 裁判年月日: 昭和37年5月31日 / 結論: 棄却
賃貸家屋明渡を求める調停の申立がなされたときは、特別の事情の認められない限り、これによつて家屋賃貸借の解約の申入れの意思表示がなされたものと解するものを相当とする。
事件番号: 昭和41(オ)431 / 裁判年月日: 昭和42年12月22日 / 結論: 棄却
訴状をもつて賃貸借契約の解約申入れをした事実および右解約申入れによる賃貸借契約終了の効果の発生を主張し、その後において右主張を撤回したからといつて、右解約申入れがされた事実までが消滅するものではなく、さらにその後において再度右主張をすることができる。