甲が乙の権利を自己の権利であるとして処分した場合に、乙がこれを追認したときは、右処分は、民法第一一六条の類推適用により、処分のときに遡つて、乙についてその効力を生ずると解すべきである(最判昭和三七年八月一〇日第二小法廷判決民集一六巻八号一七〇〇頁参照)。
他人の権利の処分と追認
民法116条,民法560条
判旨
第三者の権利を自己の権利として処分した無権利者の行為に対し、真実の権利者が追認をした場合、民法116条を類推適用し、処分の時に遡って権利者にその効力が帰属する。
問題の所在(論点)
無権利者が他人の権利を自己の名において処分した場合(無権利者の処分行為)、権利者がこれを追認することによって、その処分の効力が直接権利者に帰属するか、またその根拠はいかなるものか。
規範
無権利者が他人の権利を自己の権利として処分する行為(他人の権利の処分)があった場合において、真実の権利者がその処分を追認したときは、民法116条の類推適用により、別段の意思表示がない限り、処分の時に遡って権利者にその効力が生じる。
重要事実
本件不動産の所有者である上告人に対し、権限のない訴外Dが、自己の名において本件不動産を被上告人の代理人である訴外Eに売り渡した。その後、真実の権利者である上告人が、Dによる当該売買行為を追認した。
事件番号: 昭和42(オ)1391 / 裁判年月日: 昭和45年12月24日 / 結論: 破棄差戻
無権代理人甲が乙の代理人と称して丙と締結した抵当権設定契約を乙が追認したのち、甲が乙の代理人と称して丁と抵当権設定契約を締結した場合において、丁が甲に乙を代理して右抵当権設定契約をする権限があると信ずべき正当の事由を有するときは、乙は、民法一一〇条および一一二条の類推適用により、甲のした抵当権設定契約につき責に任じなけ…
あてはめ
本件では、Dが権限なく自己の名で上告人所有の不動産を売却しており、典型的な無権利者による処分行為にあたる。これに対し、権利者である上告人が追認を行っている。無権代理の追認に関する民法116条を類推適用すると、追認によって処分の効力は契約時に遡及して権利者に帰属することになる。したがって、D・E間の売買契約の効果は、遡って上告人と被上告人(買主本人)との間に生じることとなる。
結論
上告人の追認により、本件売買の効果は遡及的に上告人に帰属する。したがって、被上告人は本件不動産の所有権を適法に取得する。
実務上の射程
無権代理(113条以下)が「本人の名」で行うのに対し、本件のような「自己の名」での処分(無権利者の処分)には直接の規定がない。本判例により、無権代理の規定(特に116条の遡及効)を類推適用する処理が確立された。答案上は、他人物売買(561条)としての債権的効力とは別に、物権的効力の帰属を論じる際に本判例の法理を用いる。
事件番号: 昭和36(オ)342 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
事務管理者が本人の名でした法律行為の効果は、当然には本人に及ぶものではない。
事件番号: 昭和32(オ)640 / 裁判年月日: 昭和35年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】無権利者による処分行為であっても、真の権利者が後日これを追認した場合には、特段の事情のない限り、当該処分行為は処分時に遡って有効となる。また、中間者に対する登記抹消請求が認められる場合であっても、最終譲受人に対する請求が排斥されることはあり得る。 第1 事案の概要:本件不動産の所有者である上告人は…
事件番号: 昭和40(オ)1016 / 裁判年月日: 昭和42年6月30日 / 結論: その他
甲が乙との間で自己所有の建物につき代物弁済の予約を締結し、乙が右予約に基づく完結権を行使したが、その所有権移転登記前に右完結の意思表示を撤回し、しかる後関係書類を利用して、右建物を自己名義に所有権移転登記を経由した場合には、乙から右建物を買受けてその旨の所有権移転登記を受けた丙および丙からこれを賃借した丁らは甲に対し右…
事件番号: 昭和33(オ)79 / 裁判年月日: 昭和35年8月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が代理人に対して特定の法律行為(本件では不動産の売買契約)を行うための権限を授与していた場合には、当該代理人が本人の名において行った行為の効果は本人に帰属する。 第1 事案の概要:本件において、上告人の代理人であるDは、被上告人である宮城県との間で、上告人が所有する本件建物を売り渡す旨の売買契…