事務管理者が本人の名でした法律行為の効果は、当然には本人に及ぶものではない。
事務管理者が本人の名でした法律行為の効果。
民法697条,民法702条2項
判旨
事務管理者が本人の名において第三者と法律行為を行ったとしても、その効果は当然には本人に及ばず、代理権の授与等の別個の法律関係が必要である。
問題の所在(論点)
事務管理に基づいて行われた本人の名による法律行為(外部的行為)の効果は、事務管理そのものを根拠として当然に本人に帰属するか。
規範
事務管理(民法697条)は、管理者と本人との間の内部的な法律関係を定める制度であり、管理者が第三者となした法律行為の効果を直接本人に帰属させる効力は有しない。管理者が本人の名で法律行為(顕名)をした場合であっても、その効果が本人に帰属するためには、代理権の存在(100条本文、99条1項)や追認(113条1項)等、事務管理とは別個の法律上の根拠を要する。
重要事実
上告人(管理者と思われる)が、本人の名において第三者との間で法律行為を行った。上告人は、当該法律行為の効果が本人に帰属することを主張したが、原審は代理等の別個の法律関係に関する主張・立証がないとしてこれを斥けたため、上告人が最高裁に上告した。
事件番号: 昭和40(オ)132 / 裁判年月日: 昭和40年7月15日 / 結論: 棄却
甲が乙の権利を自己の権利であるとして処分した場合に、乙がこれを追認したときは、右処分は、民法第一一六条の類推適用により、処分のときに遡つて、乙についてその効力を生ずると解すべきである(最判昭和三七年八月一〇日第二小法廷判決民集一六巻八号一七〇〇頁参照)。
あてはめ
事務管理の成立は、管理者による事務処理の適法性を担保し、費用償還請求権(702条)等を発生させるに留まる。本件において、事務管理者が本人の名で法律行為を行ったとしても、それは管理者・本人間の内部関係の域を超えるものである。したがって、代理権の授与や無権代理の追認といった、行為の効果を本人に帰属させるための「別個の法律関係」の主張・立証がない限り、本人に対してその効力を主張することはできない。
結論
事務管理者が本人の名でした法律行為の効果は、当然には本人に及ばない。代理等の別個の法律関係が認められない本件では、本人に効果は帰属しない。
実務上の射程
事務管理と代理(特に無権代理・表見代理)の峻別を明確にした判例である。司法試験の答案上は、本人のために事務を行った事実から直ちに契約責任を本人に追及することはできず、必ず代理権の有無(又は表見代理の成否)を別途検討しなければならないという論理の足掛かりとして用いる。
事件番号: 昭和33(オ)79 / 裁判年月日: 昭和35年8月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が代理人に対して特定の法律行為(本件では不動産の売買契約)を行うための権限を授与していた場合には、当該代理人が本人の名において行った行為の効果は本人に帰属する。 第1 事案の概要:本件において、上告人の代理人であるDは、被上告人である宮城県との間で、上告人が所有する本件建物を売り渡す旨の売買契…
事件番号: 昭和36(オ)572 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
実体にそわない所有権移転登記は、その抹消登記手続がなされていなくても、第三者は右登記を受けた者の所有権取得を否認し得る。