判旨
法律行為が本人によってなされたか代理人によってなされたかは、法律的効果に差異を生じないため、裁判所が代理の事実を明示せずに判断しても弁論主義に違反しない。
問題の所在(論点)
法律行為(本件では委任契約の締結等)の主体が本人か代理人かという事実は、弁論主義の適用対象となる主要事実にあたるか。
規範
訴訟において、ある法律行為が本人によって行われたか、あるいはその代理人によって行われたかは、そこから生じる法律的効果(権利義務の帰属)に差異をもたらすものではない。したがって、裁判所がこれらを厳密に区別して認定しなかったとしても、当事者の主張しない事実を基礎としたことにはならず、弁論主義違反の問題は生じない。
重要事実
被上告人が上告人に対し、訴外銀行から土地を買い受けることを委任したと主張して、受任者の義務履行としての移転登記を求めた事案。原審は、委任関係の成立を認める際、判文中に「被上告人」とあるものにはその夫であるDが代理したものも包含されていると認定したが、Dが具体的にどの行為を代理したかまでは特定しなかった。これに対し、上告人は弁論主義違反等を理由に上告した。
あてはめ
弁論主義が妥当するのは主要事実に限られる。本件において、委任関係の成立という法律効果を発生させる事実は、契約締結の有無であり、それが本人によるものか代理人によるものかは、最終的な法律効果の帰属において区別を要しない。原審が「被上告人とある中には代理人Dによる行為も含まれる」と包括的に認定し、個別の行為主体を明らかにしなかったとしても、当事者が主張する法律効果を認める範囲内での事実認定といえる。したがって、当事者の主張しない事実を認定したとはいえず、弁論主義に反する瑕疵はない。
結論
法律行為が本人か代理人かという点は法律的効果に変わりがないため、その峻別を欠いた認定も弁論主義に違反せず、適法である。
事件番号: 昭和39(オ)900 / 裁判年月日: 昭和40年2月11日 / 結論: 棄却
「被上告人が甲を代理人とし一二月初め代物弁済予約完結の意思表示をした」との主張に対し、裁判所が、被上告本人が一二月二七日頃代物弁済予約完結の意思表示をしたと認定しても、弁論主義に反しない。
実務上の射程
主要事実の特定に関する射程を持つ。代理人による行為か本人による行為かは、私法上の効果が同一である限り、主要事実そのものではなく、主要事実(契約の成立等)を推認させる補助事実に準ずるもの、あるいは主要事実の態様にすぎないと整理する。答案上は、相手方の不意打ちにならない範囲での認定の弾力性を認める根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(オ)704 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法826条にいう利益相反行為に該当するか否かは、行為の動機や実質的な利害関係ではなく、もっぱら行為の外形から判断すべきである。 第1 事案の概要:親権者である父Dが、未成年の子である上告人の代理人として、第三者Fとの間で本件不動産の売買契約(甲1号証)を締結した。この行為について、上告人側は、実…
事件番号: 昭和36(オ)342 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
事務管理者が本人の名でした法律行為の効果は、当然には本人に及ぶものではない。
事件番号: 昭和32(オ)473 / 裁判年月日: 昭和35年4月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表見代理の成立要件である「正当な理由」の存否については、代理人と称する者の署名形式のみならず、周囲の諸客観的事実を総合的に考慮して判断されるべきである。 第1 事案の概要:訴外Dは、本人である上告人を代理して、被上告人との間で本件売買契約を締結した。しかし、当該契約に係る売渡証書(甲一号証)におい…
事件番号: 昭和37(オ)1400 / 裁判年月日: 昭和39年11月13日 / 結論: 棄却
ある契約が甲乙間に成立したものと主張して右契約の履行を求める訴が提起された場合に、裁判所が右契約は甲の代理人と乙との間になされたものと認定しても弁論主義に反するものとはいえない。