養親子間における実質的な親子関係が客観的に破壊されている場合には、右破壊の原因が全面的にまたは主として離縁を求める者の側にある等、その者からの離縁請求が著しく正義に反するような特段の事情がないかぎり、民法第八一四条第一項第三号所定の「縁組を継続し難い重大な事由」があるといつてさまたげない。
養親子関係の実質的な破壊と「縁組を継続し難い重大な事由」。
民法814条1項
判旨
養親子間における実質的な親子関係が客観的に破壊されたと認められる場合、破綻の原因が専ら請求者にある等の特段の事情がない限り、縁組を継続し難い重大な事由があるとして離縁請求が認められる。
問題の所在(論点)
養親子としての実態が客観的に破綻している場合、民法814条1項3号にいう「縁組を継続し難い重大な事由」が認められるか。また、有責配偶者の離婚請求と同様の制限(有責当事者からの請求制限)が離縁請求にも適用されるか。
規範
養親子間において、経済的扶養扶助、通常の社会生活上の交際、および合理的な精神的つながりが客観的に破壊されたと認められる場合には、民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」があるものと解する。ただし、当該関係の破壊が全面的または主として離縁を望む当事者の責任に帰すべきものであるなど、身分法を貫く正義の原則に著しく反する特段の事情がある場合はこの限りではない。
重要事実
養親(被上告人)と養子(上告人)が離別してから既に16年余が経過していた。両者の間には、経済的な扶養扶助の関係はもとより、親子としての通常の交際も一切途絶えていた。また、親子の関係として本来要請されるべき精神的なつながりも全く失われており、養親子としての実態が客観的にみて完全に消失している状態であった。このような状況下で、養親が養子に対し裁判上の離縁を請求した。
あてはめ
本件では、16年という長期にわたる別居と交絶により、経済的・精神的側面の両面において親子関係が客観的に破壊されているといえる。また、この破綻の原因が全面的に養親側にあるといった事情や、離縁を認めることが正義の原則に著しく反すると評価すべき特段の事情について、立証や確信を得るに足りる資料は存在しない。したがって、客観的な破綻の事実をもって「重大な事由」があると評価される。
結論
被上告人(養親)の離縁請求には「縁組を継続し難い重大な事由」が存在するものと認められ、離縁請求は認容されるべきである。
実務上の射程
裁判上の離縁において「破綻主義」を採用しつつ、信義則(正義の原則)による有責者からの請求制限を明示したものである。離婚における有責配偶者からの請求(最大判昭62.9.2)と同様の構成を採っており、実務上、離縁の可否は関係修復の可能性(客観的破綻)と請求者の有責性の有無を基準に判断することとなる。
事件番号: 昭和32(オ)1088 / 裁判年月日: 昭和33年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】養親子の間に敬愛の念が喪失され、夫婦関係の維持等の事情から将来にわたって愛情の回復が困難であると認められる場合には、民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」に当たると解される。 第1 事案の概要:養親(被上告人)が夜中、養子(上告人)に足腰をさすらせた後、自室に戻ろうとする養子を留めて…