農業及び祭祀の承継を目的としてされた成年者を養子とする縁組において、会社に勤務しつつ農作業に従事することを了解していた養子の農業の手伝い方などをめぐつて養父母と養子との間に感情的対立が昂じ、互いに暴言やいやがらせの言動が重なり、養子が養父母に対し押し倒したり足蹴にするなどの暴行を加えたことがあるなど判示の事実関係があるときは、民法八一四条一項三号にいう「縁組を継続し難い重大な事由」があるものと認めるのが相当である。
縁組を継続し難い重大な事由があるとされた事例
民法814条1項3号
判旨
老齢の養父母に対する暴力行為等は、養親子関係を破綻に導く重い事実として評価すべきであり、和合に向けた真摯な努力がない限り「縁組を継続し難い重大な事由」が認められる。
問題の所在(論点)
民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」の有無の判断基準、および老齢の養父母に対する暴力行為の評価が問題となる。
規範
民法814条1項3号にいう「縁組を継続し難い重大な事由」とは、養親子間の信頼関係が破綻し、和合の見込みがない客観的状態を指す。この判断にあたっては、暴力行為の態様、当事者の年齢、破綻に至る経緯、および関係改善に向けた真摯な努力の有無を総合的に考慮すべきである。特に、老齢の養父母に対する暴力は、実親子関係と同等に評価すべきではなく、関係破綻を導く事情として重視される。また、一方に破綻の主たる責任があるとはいえない場合には、上記事由の成立が肯定されやすい。
重要事実
農後継者を求めて養子縁組をした高齢夫婦(80歳と67歳)と養子(34歳)の間で、農作業等を巡り感情的対立が生じた。養子は養父を押し倒し、養母に空瓶を投げ足蹴にする暴行に及んだ。夫婦が離縁調停を申し立てたが養子は出頭せず、夫婦もこれに絶望し養子の居室の電燈線を切るなどの嫌がらせを行った。養子は口頭では和合を望むが具体的な努力はしていなかった。原審は、夫婦側の嫌がらせを重視し、破綻の主責が夫婦にあるとして離縁請求を棄却した。
あてはめ
まず、養子が80歳を超えた養父母に対し押し倒す、足蹴にする等の暴行を加え、以前から対立が蓄積していた点は、単なる一時的偶発的な不和ではなく、関係破綻を導く重要な事実といえる。次に、養子は和合を望むと述べるが、調停を欠席し改善の努力もしておらず、主観的な和合の意思を過大評価すべきではない。さらに、夫婦側の嫌がらせは、暴力や不信感により関係が既に冷却破綻した後に、将来の不安から行われたものであり、夫婦側のみに破綻の主たる責任があるとはいえない。以上より、本件養親子関係は既に回復し難いほど破綻していると評価される。
結論
本件には「縁組を継続し難い重大な事由」が認められるため、上告人らの離縁請求は認められる(第一審判決を支持し離縁を認容)。
実務上の射程
裁判離縁における破綻の判断基準を示す。特に「暴力の有無」と「和合の可能性」を重視する実務の運用を確認する。また、有責配偶者からの離婚請求と同様に、離縁においても「主たる責任」が請求者にある場合は請求が制限される余地を示唆しつつ、本案では双方の非を比較して請求を認めた点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和40(オ)1317 / 裁判年月日: 昭和42年5月25日 / 結論: 棄却
特定の住居で布教または祭祀を行なわない旨の私人間の約束は、憲法第二〇条第一項に違反しない。