特定の住居で布教または祭祀を行なわない旨の私人間の約束は、憲法第二〇条第一項に違反しない。
特定の住居で宗教活動をしない約束と憲法第二〇条第一項
憲法20条
判旨
養親子としての実体が失われ将来の回復も不能となった原因が主として一方にある場合、民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」にあたる。また、私人間で特定の場所での布教等をしない旨を約束することは、憲法20条の信教の自由を侵害しない。
問題の所在(論点)
1.民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」が認められるか。2.特定の場所で布教等を行わない旨の私人間の約束が、憲法20条の保障する信教の自由に反し無効となるか。
規範
1.民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」の存否については、養親子間の実体の喪失、将来における回復の可能性、および破綻の原因がどちらにあるかを総合的に考慮して判断する。2.憲法20条が保障する信教の自由は、国家等の権力による不当な侵害を禁ずるものであり、私人間で特定の場所での布教や祭祀を行わない旨を合意することを直ちに禁ずるものではない。
重要事実
養親(被上告人)と養子(上告人)らとの間で、養親子としての生活実体が全く失われ、将来においてもその回復が不能な状態となった。この破綻の主要な原因は養子側にあった。また、関係者の間で特定の場所における布教や祭祀を制限する旨の合意が存在した可能性があり、これが信教の自由を侵害し公序良俗等に反するかが争われた。
あてはめ
1.本件では、養親子間の実体が完全に失われており、その回復の見込みも立っていない。さらに、この破綻を招いた主たる責任が養子側にあることが認定されている。したがって、単なる破綻主義の採用ではなく、有責性の観点からも「縁組を継続し難い重大な事由」があるといえる。2.信教の自由は自己の欲するところに従い信じる自由を国家権力から保障するものである。本件の約束は、特定の場所における布教等を制限する私人間の合意にすぎず、国家による侵害ではないため、憲法違反とはならない。
結論
1.養子側に主たる原因がある破綻状態は「縁組を継続し難い重大な事由」に該当し、離縁請求は認められる。2.特定の場所での布教を控える私人間の約束は合憲である。
実務上の射程
裁判離縁における「重大な事由」の判断に際し、実体の喪失と有責性の双方を考慮する実務を裏付ける。また、憲法の私人憲法適用において、三菱樹脂判決(最大判昭48・12・12)に先んじて、信教の自由が対国家的な保障であることを示し、私人間の合意を有効とした射程を持つ。
事件番号: 昭和32(オ)1088 / 裁判年月日: 昭和33年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】養親子の間に敬愛の念が喪失され、夫婦関係の維持等の事情から将来にわたって愛情の回復が困難であると認められる場合には、民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」に当たると解される。 第1 事案の概要:養親(被上告人)が夜中、養子(上告人)に足腰をさすらせた後、自室に戻ろうとする養子を留めて…