有責者たる養親が無責者たる養子に対し、その意思に反して、民法第八一四条第一項第三号により離縁を求めることはできない。
民法第八一四条第一項第三号の離縁原因にあたらない事例。
民法814条1項3号
判旨
民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由」は必ずしも当事者の有責性に限られないが、有責者が無責者の意思に反して離縁を請求することは許されない。
問題の所在(論点)
民法814条1項3号の離縁原因(縁組を継続し難い重大な事由)に関し、縁組関係の破綻について主たる責任のある有責配偶者ならぬ「有責養親または養子」からの離縁請求が認められるか。
規範
民法814条1項3号にいう「縁組を継続し難い重大な事由」の存否は、必ずしも当事者双方または一方の有責性に限られるものではない。しかし、自ら縁組関係を破綻させた有責者が、無責の相手方の意思に反して離縁を請求することは、信義則上許されない。この法意は、離婚の訴えに関する同法770条1項5号と同様である。
重要事実
上告人が、被上告人に対して民法814条1項3号に基づき離縁の訴えを提起した。原審の認定によれば、本件の縁組関係が破綻したことについて、被上告人には責任が認められない一方で、むしろ上告人を有責者とすべき事情が存在していた。上告人は、自らに主たる責任がある破綻状況を根拠として離縁を求めたが、被上告人はこれに応じなかった。
あてはめ
本件における事実関係に照らすと、被上告人は有責者とはいえず、むしろ上告人が縁組関係を破綻させた有責者であると認められる。このような有責者である上告人が、無責である被上告人の意思に反して、自ら作り出した破綻状況を理由に離縁を請求することは、民法814条1項3号の趣旨に照らして許容されない。したがって、同号の事由があるとはいえない。
結論
有責者からの離縁請求は認められず、本件離縁請求は排斥される。上告棄却。
実務上の射程
判決当時の判例理論(有責主義)を離縁にも適用したものであり、現在の裁判離婚における「有責配偶者からの離婚請求」の制限論(昭和62年大法廷判決)と同様の論理構成をとる。離縁事由の判断において、破綻の責任の所在が請求の許否に直結することを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和37(オ)171 / 裁判年月日: 昭和37年8月3日 / 結論: 棄却
民法第八一四条第一項三号にいわゆる「縁組を継続し難い重大な事由」は、その有責事由が当事者のいずれか一方にあることを要するものではない。