農地の売買契約を締結する場合には、知事の許可を停止条件とする旨の付款を要するものではなく、右のような条件を付していないからといつて、直ちにその売買契約が無効なものと確定するわけのものではない。
農地の売買契約では知事の許可を停止条件と付することを要するか
農地法3条,民法127条
判旨
農地法上の採草放牧地の所有権移転における知事の許可は法律上当然の効力発生要件であるため、売買契約時に許可を停止条件とする特約を付さずとも、直ちに当該契約が無効になるわけではない。
問題の所在(論点)
農地法に基づく所有権移転許可が必要な採草放牧地の売買において、契約当事者が「知事の許可を停止条件とする」旨の特約を付さなかった場合、その売買契約は無効となるか。
規範
農地法に基づく採草放牧地の所有権移転に関する知事の許可は、法律上当然の効力発生要件(法定の停止条件)である。したがって、当事者が売買契約を締結する際、知事の許可を停止条件とする旨の明示的な特約を附さなくても、その契約が当然に無効となるものではない。
重要事実
被上告人と上告人の先代(亡D)との間で、採草放牧地の所有権移転を目的とする売買契約が締結された。この際、契約当事者間において農地法上の知事の許可を停止条件とする旨の附款(特約)は明示的に付されていなかった。上告人側は、このような特約がない以上、売買契約は無効である旨を主張して争った。
事件番号: 昭和42(オ)30 / 裁判年月日: 昭和43年4月4日 / 結論: 棄却
共有者の一人が、権限なく、共有物を自己の単独所有に属するものとして他に売り渡した場合でも、売買契約は有効に成立し、自己の持分をこえる部分については、他人の権利の売買としての法律関係を生ずるとともに、自己の持分の範囲内においては、約旨に従つた履行義務を負う。
あてはめ
農地法上の許可は、権利移転の効力を発生させるための公法上の要件であり、民法上の特約の有無にかかわらず、法律上当然に契約の効力発生を左右する性質(法定の停止条件)を有する。本件において、売買契約が確定的に締結されている以上、たとえ許可に関する明示的な附款が欠けていたとしても、公法上の要件を充たすまでは効力が発生しないにとどまり、契約自体が直ちに無効として確定するものではないと解される。
結論
売買契約時に知事の許可を停止条件とする特約を要するものではなく、特約がないことをもって売買契約を無効とすることはできない。
実務上の射程
農地等の売買における許可の法的性質を「法定の停止条件」と位置づける。答案上では、許可未取得段階の売買契約の効力(債権的効力のみ発生し、物権変動は停止する状態)を論ずる際の根拠として活用できる。本判決は採草放牧地に関するものだが、農地法3条等の農地一般の許可制にも通ずる法理である。
事件番号: 昭和30(オ)914 / 裁判年月日: 昭和33年3月28日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地売買において知事の許可を得る手続をする約束がある場合、許可前の引渡しや耕作の開始という事実のみをもって、直ちに農地法違反の無効な契約と断定することはできない。 第1 事案の概要:売主と買主との間で本件農地の売買契約が締結された際、直ちに知事の許可を受ける手続をすることが約束されていた。しかし、…
事件番号: 昭和39(オ)1397 / 裁判年月日: 昭和41年2月24日 / 結論: 棄却
知事の許可なくしてなされた農地の売買契約においても、特段の事情のないかぎり、売主は知事に対し所定の許可申請手続をなすべき義務を負い、また、もしその許可があつたときは、買主のため所有権移転登記手続をなすべき義務を負担するに至るものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和39(オ)1226 / 裁判年月日: 昭和41年6月30日 / 結論: その他
現況宅地である土地について農地法第三条の知事の許可を条件として所有権移転登記を請求する訴訟が提起された場合には、裁判所は、宅地としての売買による所有権移転登記の請求についてまで前記条件を付する趣旨か否かを釈明して判断するのが相当である。
事件番号: 昭和38(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和39年6月9日 / 結論: 棄却
農地につき知事の許可なくして為された売買契約でも、その後該農地が適法に宅地化されたときは、そのときから当然効力を生ずると解すべきである。