借地法第一〇条の買取請求の目的となつた数個の建物の時価を算定するについて、各建物の価格に差等を付する理由がないというだけで、それぞれ一定の場所的環境に存在することによつて帯有する価格の差等を斟酌しないのは違法である。
借地法第一〇条の買取請求の目的となつた建物の時価を算定するについて建物の存在する場所的環境を斟酌しなかつた違法があるとされた事例
借地法10条
判旨
借地法10条に基づく建物買取請求権における「時価」とは、建物が現存するままの状態における価格をいい、建物自体の建築費のみならず、建物が存する場所的環境を斟酌して算定すべきである。
問題の所在(論点)
建物買取請求権の行使に伴う対価としての「時価」の算定において、建築費等の物理的要素だけでなく、建物が所在する「場所的環境」を考慮すべきか。
規範
借地法10条(現行借地借家法13条・14条参照)の買取請求における建物の「時価」とは、建物を取り壊した場合の動産としての価格ではなく、建物が現存するままの状態における価格である。算定にあたっては、借地権の価格そのものは加算すべきではないが、建物の存在する場所的環境を斟酌して決定すべきである。
重要事実
建物所有を目的とする借地の賃貸借が終了し、建物所有者(上告人)が地主(被上告人)に対し建物買取請求権を行使した。原審は、建物の価格について、一坪当たりの建築費及び残存価格を基準として算出したが、建物の存する場所的環境による価値の加算を一切考慮せずに時価を認定したため、上告人がその算定方法の違法を訴えて上告した。
事件番号: 昭和43(オ)341 / 裁判年月日: 昭和47年5月23日 / 結論: 棄却
借地法一〇条による建物買取請求権が行使された場合におけるその買取価格の算定には、建物の存在する場所的環境を参酌すべきであり、そのためには、建物自体の価格のほか、建物およびその敷地、その所在位置、周辺土地に関する諸般の事情を総合考察することにより、建物が現存する状態における買取価格を定めなければならないものと解するのが相…
あてはめ
原審の認定した価格は、鑑定結果に照らすと建築費のみを基準とした建物自体の価格(再調達原価等)にすぎないことが明瞭である。原審は、建物が同一場所に存し環境に差異がないことを理由に、場所的環境の斟酌を不要とした。しかし、建物がその場所にあることによって享受する便益や立地条件といった「場所的環境」は、建物が現存する状態での客観的価値を構成する不可欠な要素である。したがって、これらを全く考慮しない算定は時価の解釈を誤っているといえる。
結論
建物の時価算定において場所的環境を考慮しなかった原判決には法令解釈の誤りがある。したがって、原判決の引換給付を命じた部分を破棄し、審理を尽くさせるため本件を差し戻す。
実務上の射程
建物買取請求権における「時価」の意義を明確にした重要判例である。答案上は、時価に借地権価格そのものは含まれないが、場所的環境(立地)は含まれるという二段階の峻別を明示することが重要である。現行法下の買取請求事案(13条、14条)においても、そのまま射程が及ぶ規範である。
事件番号: 昭和53(オ)55 / 裁判年月日: 昭和53年7月17日 / 結論: その他
借地法一〇条の建物買取請求権の成否を判断するにあたり、鑑定書に、借地権がない場合の建物の相当売買価額は零である旨の記載部分があつても、その理由としては、建物を解体撤去するのが妥当で、古材は解体費用に満たないとの記載があるにとどまり、かえつて、借地権があるとした場合の相当売買価額は七〇二万八〇〇〇円であり、借地権の価格は…
事件番号: 昭和36(オ)43 / 裁判年月日: 昭和36年7月6日 / 結論: 棄却
土地所有者が仮設建築物を所有して土地を不法占有する者を相手方として土地明渡の調停を申立てたところ、その建物の居住者が利害関係人として期日に出頭し、なお居住者が多数あることが判明したので、事態の解決を計るため、調停外において右居住者中の有力者一名と期間を一〇年とする土地賃貸借契約を結び、一〇年後には必ず返地することを確約…
事件番号: 昭和33(オ)279 / 裁判年月日: 昭和33年7月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の明渡請求が権利の濫用(民法1条3項)に当たるか否かは、当該請求を認めることが社会通念上著しく正当性を欠くといえるか等の事実関係を総合考慮して判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(被告)に対し、被上告人(原告)が本件建物の明渡しを求めた事案である。原審において認定された事実関係の詳細…