借地法第一〇条の買取請求の目的となつた建物の時価は、建物を取りこわした場合の動産としての価格でなく、建物が現存するままの状態における価格であつて、敷地の借地権の価格は加算すべきでないが、その建物の存在する場所的環境は参酌して算定すべきものである。
借地法第一〇条の建物の時価
借地法10条
判旨
借地法10条(現:借地借家法13条)の建物買取請求権における「時価」とは、建物が現存するままの状態における価格をいい、敷地の借地権価格は加算すべきでないが、場所的環境による価値は参酌すべきである。
問題の所在(論点)
借地法10条(建物買取請求権)に基づく建物の「時価」の算定において、借地権自体の価格や、建物の存在する「場所的環境」を考慮すべきか。
規範
借地法10条にいう建物の「時価」とは、取壊しを前提とした動産としての価格ではなく、建物が現存するままの状態における価格を指す。この算定にあたり、敷地の借地権そのものの価格は加算すべきではない。しかし、建物の存在する場所的環境については参酌すべきである。なぜなら、特定の場所に建物が存在することによる事実上の利益は建物自体の存在から生じるものであり、場所的環境を考慮した取引は一般の取引通念に合致するからである。
重要事実
上告人(借地人)が、借地法10条に基づき建物買取請求権を行使した事案において、建物の「時価」の意義が争点となった。原審は、建物の「時価」を算定する際、建物が辺鄙な場所にあるか繁華な場所にあるかといった場所的価値を含まず、場所の如何によって価格を異にしないものと解して算定を行った。これに対し、場所的環境の考慮の要否を巡って上告がなされた。
事件番号: 昭和39(オ)403 / 裁判年月日: 昭和40年7月13日 / 結論: その他
借地法第一〇条の買取請求の目的となつた数個の建物の時価を算定するについて、各建物の価格に差等を付する理由がないというだけで、それぞれ一定の場所的環境に存在することによつて帯有する価格の差等を斟酌しないのは違法である。
あてはめ
本件では、原審の判旨において場所的価値を考慮しないとした点は解釈として誤りである。しかし、原審が認定した具体的な時価の内容を検討すると、実際には建物が現存する状態における建物自体の価格を算定しており、その過程で建物の存在する場所的環境が自ずと考慮に入れられていると認められる。したがって、原審の解釈上の瑕疵は、結論としての価格算定の結果に影響を及ぼすものではないと評価される。
結論
建物買取請求権における建物の時価は、借地権価格は含まないが、場所的環境を参酌して算定されるべきであり、本件の原判決の結論は維持される。
実務上の射程
借地借家法13条に基づく建物買取請求権の「時価」算定のリーディングケースである。答案上では、①借地権価格そのものは除外する点、②場所的利益(場所的環境)は建物自体の価値として参酌する点、の2点を区別して論じる際に活用する。場所的利益を肯定する理由は「事実上の利益」と「取引通念」にある。
事件番号: 昭和43(オ)341 / 裁判年月日: 昭和47年5月23日 / 結論: 棄却
借地法一〇条による建物買取請求権が行使された場合におけるその買取価格の算定には、建物の存在する場所的環境を参酌すべきであり、そのためには、建物自体の価格のほか、建物およびその敷地、その所在位置、周辺土地に関する諸般の事情を総合考察することにより、建物が現存する状態における買取価格を定めなければならないものと解するのが相…
事件番号: 昭和33(オ)273 / 裁判年月日: 昭和33年11月27日 / 結論: 棄却
一 仮建築の建物を建てて使用するため、期間を一年とし、当事者協議の上更新し得る約で土地を賃貸したところ、賃借人が、無断で本建築をしたので、賃貸人から家屋収去土地返還の調停を申立てた結果、賃貸期間を調停成立以後約八年とし期間満了のとき賃借人所有の地上建物は賃貸人に贈与する旨の調停が成立した場合、右賃貸借は、一時使用のため…
事件番号: 昭和36(オ)1350 / 裁判年月日: 昭和37年11月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法に基づく更新拒絶の正当事由の有無は、諸般の事情を総合的に考慮して判断されるべきであり、賃貸人の生活維持のために土地を使用する必要性等の個別事情は、正当事由を構成する一判断要素として認められる。 第1 事案の概要:土地の賃貸人である被上告人が、借地期間の満了に伴い更新拒絶を主張して土地の明け渡…