賃借土地上の建物が第三者の所有に帰したときは当然に消滅する旨の特約は借地法第一一条に違反しない。
賃借土地上の建物が第三者の者の所有に帰したときは賃借権が当然に消滅する旨の特約と借地法第一一条。
借地法11条,民法612条
判旨
賃借地上の建物の所有権が第三者に移転した場合、特段の事情のない限り賃借権の無断譲渡・転貸があったと解される。この場合に賃貸人の承諾なき譲渡・転貸があれば賃貸借契約が当然に終了する旨の合意は、背信行為と認めるに足りない特段の事情がない限り、借地権者に不利な特約とはいえず有効である。
問題の所在(論点)
賃借地上の建物が第三者に譲渡された場合に賃借権が当然に消滅するという特約が、強行規定(借地法11条、現借地借家法9条等)に抵触し、賃借人に不利な特約として無効となるか。
規範
1. 賃借地上の建物の所有権が第三者に移転したときは、特段の事情のない限り、これに伴って賃借権の譲渡または転貸がなされたものと解する。 2. 賃借権の無断譲渡・転貸において、賃貸人は、賃借人の行為が賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がない限り、無催告で解除し得る(信頼関係破壊の法理)。 3. したがって、無断譲渡・転貸があった場合に契約を当然に終了させる旨の特約は、上記「特段の事情」がない限り、借地法11条(現借地借家法9条)にいう賃借人に不利な特約には当たらず有効である。
重要事実
賃借人Dは、被上告人(賃貸人)から本件土地を借り受けていた。Dと被上告人との間には、「賃借土地上の建物その他の付属物が第三者の所有に属したときは、賃借権は当然に消滅する」旨の特約が存在した。その後、本件土地上の建物の所有権が第三者に移転し、賃借権の無断譲渡または転貸が行われる状態となった。これに対し、賃貸人は上記特約に基づき賃借権の消滅(土地明け渡し)を主張した。
事件番号: 昭和25(オ)140 / 裁判年月日: 昭和28年9月25日 / 結論: 棄却
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはできない。(少数意見および補足意見がある。)
あてはめ
本件において、賃借地上の建物の所有権が第三者に移転したことで、実質的に賃借権の無断譲渡・転貸がなされたものと認められる。この点、無断譲渡・転貸があったとしても、背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には解除が制限されるが、原審によれば本件ではそのような特段の事情は存しないと判断されている。したがって、無断譲渡等があれば契約を当然終了させるという特約を適用したとしても、本来賃貸人が有する解除権の範囲内での行使を予定しているものにすぎず、賃借人にとって不当に不利な内容とはいえない。また、本件請求が権利の濫用や信義則に反するとも認められない。
結論
本件特約は有効であり、背信行為と認めるに足りない特段の事情がない本件においては、特約に基づき賃借権は当然に消滅する。上告棄却。
実務上の射程
無断譲渡・転貸を理由とする解除事案において、当然消滅特約(失権約款)の有効性が問題となる際のリーディングケースである。答案上は、まず民法612条2項の解除法理(信頼関係破壊の法理)を展開した上で、その解除権行使を定型化したにすぎない特約であれば、強行法規(借地借家法9条・30条等)に反しないとするロジックで使用する。ただし、常に特約が有効になるわけではなく、あくまで「背信性がない」という反証がなされないことが前提となる点に注意が必要である。
事件番号: 昭和39(オ)306 / 裁判年月日: 昭和40年6月4日 / 結論: 棄却
土地賃貸借契約の当事者間において、賃借地上の建物が第三者の所有に帰したときは賃借権は当然に消滅する旨の特約がなされた場合であつても、賃借人が第三者に譲渡した建物の敷地部分が借地全体からみて少部分であり、しかも、元来その余の部分とは別々の時期に別々に賃借され、従来から明確に区分されて使用されている等原判示の事情(原判決理…
事件番号: 昭和39(オ)25 / 裁判年月日: 昭和39年6月30日 / 結論: 棄却
一 甲(女)が、乙の借地上にある乙所有建物に乙と事実上の夫婦として同棲し、協働して鮨屋を経営していたが、乙の死亡後、その相続人から建物とともに借地権の譲渡を受け、引きつづき右土地を使用し同建物で鮨屋を経営しており、賃貸人も、甲が右建物に事実上の夫婦として乙と同棲していたことを了知していたような場合は、右借地権譲渡は、こ…
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…
事件番号: 昭和42(オ)785 / 裁判年月日: 昭和42年12月8日 / 結論: 棄却
賃貸借の目的たる土地が四四・七坪である場合に、うち二三・七坪が無断転貸された場合は、特段の事情がない限り、右転貸は背信行為にあたるから、賃貸借の解除は有効である。