約束手形の振出人のための保証人に対する所持人の権利は、所持人が遡求手続を懈怠したからといつて、失われることはない。
約束手形の振出人のための保証人に対する所持人の権利は遡求手続の懈怠によつて失われるか。
手形法77条3項,手形法32条1項,手形法53条
判旨
記名捺印による手形行為において、使用される印章は日常所用のものに限定されず、約束手形の振出人に対する保証人は、遡求手続の欠缺にかかわらず振出人と同様の支払義務を負う。
問題の所在(論点)
1. 代表者名義を代行した手形行為において、現職代表者の印章ではなく前任者の印章を用いた場合に、当該手形行為は有効か。 2. 約束手形の振出人に対する保証人は、支払呈示や支払拒絶証書の作成といった遡求手続がなされていない場合であっても、手形法53条により権利を喪失することなく責任を負うか。
規範
1. 記名捺印による手形行為において、印章は記名者の印章として押捺されれば足り、日常所用のものである必要はない。代行者による場合も同様である。 2. 約束手形の振出人の保証人は、振出人と同一の責任を負う(手形法77条3項、32条1項)。振出人は遡求義務者ではなく、時効まで無条件に支払義務を負うため、所持人が遡求手続を怠ったとしても、振出人およびその保証人に対する権利は失われない(同法53条1項但書参照)。
重要事実
上告人(組合)の常務理事Eは、代表者Dから手形行為の権限を与えられ、Dの名義を代行して本件各手形に支払保証をした。その際、一部の手形に押捺された代表者印は、Dが現に使用している印章ではなく、死亡した前組合長が使用していた旧印章であった。また、本件手形の一部について支払拒絶証書が作成されておらず、支払のための呈示もなされていなかったため、上告人は支払保証人としての責任を免れると主張して争った。
あてはめ
1. 手形行為における印章の有効性について、当該印章が記名者のものとして示されれば足りる。本件では、権限を有するEがDの名代として前組合長当時の印章を用いたが、これはDの印章として押捺されたものといえ、有効な支払保証にあたる。 2. 保証人の責任について、本件は約束手形の振出人に対する保証である。振出人は引受人と同様に主たる債務者であり、遡求手続の有無にかかわらず責任を負う。したがって、その保証人である上告人も、支払呈示や拒絶証書の欠缺を理由に責任を免れることはできない。
結論
本件各手形への支払保証は有効であり、かつ遡求手続がなされていない場合であっても、上告人は振出人と同一の支払義務を免れない。
実務上の射程
手形行為における印章の同一性や日常性の不要を明示した点で実務上重要である。また、約束手形の振出人の保証人が「主たる債務者」と同様の地位にあり、遡求手続の有無に左右されないという原則は、手形保証の責任範囲を画定する際の基礎的な規範として機能する。
事件番号: 昭和36(オ)1203 / 裁判年月日: 昭和37年3月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】手形保証の意思表示において、署名に肩書(理事、監事等)が付記されていても、被代理人の表示を欠く場合には、原則として個人による手形保証と解される。 第1 事案の概要:振出人である訴外組合のため、上告人らが本件約束手形に手形保証を行った。手形の附箋部分には、上告人らの住所、氏名、押印のほか、それぞれ「…