商品取引所の受託契約準則第三条に定める有効な書面の差し入れなくしてなされた取引であるからといつて、右取引が無効とはならない。
商品取引所の受託契約準則に違反する取引の効力。
商品取引所法96条
判旨
代理権が有効に授与されている以上、受託契約準則に定める書面の提出等の手続が履践されていなくても、代理人による取引の効果は本人に帰属する。
問題の所在(論点)
正当な代理権の授与がある場合において、商品取引所受託契約準則に定める書面の差し入れ等の手続を欠くことが、代理行為の有効性および本人への効果帰属を否定する理由となるか。
規範
商品取引所受託契約準則における書面の差し入れを定めた規定は、取引の有効要件ではなく訓示的規定にすぎない。したがって、実体法上の代理権が正当に授与されている場合には、同規定に基づく書面の有無は、代理行為の効力発生を左右するものではない。
重要事実
原告(上告人)らは、訴外Dに対して特定の取引に関する代理権を授与した。Dは、この代理権に基づき被告(被上告人)との間で取引を行った。一方で、当時のE商品取引所受託契約準則3条には、一定の書面を差し入れるべき旨の規定が存在した。原告らは、当該規定に基づく書面が真正に作成され差し入れられていないことを理由に、取引の効果が本人に帰属しないと主張して争った。
あてはめ
本件において、第一審および原審は、原告らがDに対し本件取引につき代理権を授与した事実を認定している。また、商品取引所受託契約準則3条は、取引の安全や適正を期するための訓示的な規定であり、その遵守が私法上の法律行為の有効要件となっているわけではない。したがって、同条に基づく書面が原告らにより真正に作成され差し入れられたか否かという事実は、既に認められている代理権の行使による効果帰属を妨げるものではないと解される。
結論
取引の効果は本人に及ぶ。受託契約準則の規定に反する手続上の不備があっても、有効な代理権に基づく取引の効力は妨げられない。
実務上の射程
行政上の監督規定や取引所の内部規則(訓示的規定)に反する事実があっても、民法上の代理の要件を満たす限り、私法上の契約の効力は否定されないという実務上の原則を確認するものである。答案上は、強行法規違反による無効(民法90条等)や代理権の範囲を争う場面での反論として検討される。
事件番号: 昭和38(オ)538 / 裁判年月日: 昭和40年5月4日 / 結論: 棄却
証券業者の外務員が名義書換のために寄託に基づき保管していた株券をほしいままに売却処分などをしたときには、その証券業者は、民法第七一五条第一項により損害賠償責任がある。